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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

マイナンバー保険証導入

府医ニュース

2022年4月20日 第2997号

ショック・ドクトリン的手法

 令和4年度診療報酬改定で、オンライン資格確認システム(オン資システム)を通じた患者情報等の活用に係る評価が新設された。 初診時に同システムを通じて患者の薬剤情報または特定健診情報等を取得した場合は7点、システムを導入しているが情報を取得困難な場合等については、初診に限り初診料に対して3点を加算できる。再診時においては、月1回、再診料(外来診療料)に4点が加算される。懸念されていた運用面での医療機関コスト負担に応えた形である。
 「マイナンバーカードが健康保険証として利用できます」という、ある地方自治体ホームページには「利用申し込みで7500円相当のマイナポイントがもらえます」と利用者へのインセンティブを促す記述も見受けられる。
 一方で、発熱対応を駐車場で行っている府内診療所(システム非対応)において、患者が保険証を持参せず紐付け済みのマイナンバーカードを持参した事例が報告されている。本人はマイナンバーカードが保険証の代わりになり「ほとんどすべての医療機関で使用できる」と説明を受けたと言い張り、現場ではかなりの手間がかかったそうだ(この方は紐付けの後、保険証の発行はされなかったという)。政府広報の成果であろう。そもそも屋外では写真付きカードリーダーを使用できない。発熱外来対応でのマイナンバーカードの使用方法を我々現場に提示してほしいし、高齢認知症患者が増加している中、この時期にマイナンバーカード利用を進めるのも疑問である。
 大阪における病院や薬局のシステム設置状況(4月3日現在)は、病院509施設中、準備完了30.8%、運用開始24.4%、薬局4416施設中、準備完了40.2%、運用開始 25.1%となっている。一方、診療所における設置状況は、8073施設中、準備完了は12.3%、運用開始8.0%と振るわない。慢性的なコロナ対策で設置まで手が回らないのが本音だと思われる。
 カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインは、「大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革」をショック・ドクトリンと名付けた。社会が大きな危機の中にある時、通常なら受け入れることのない改革案を、大衆は目の前の救済策として飛びついてしまう、そんな政策である。火事場泥棒的資本主義ともいう。
 オミクロン株大流行の最中、我々は目の前の患者対応に追われ、思考を停止させられている。そんな時に、マイナンバー政策をSociety5.0のスケジュール通りに事を進めるのではなく、現場の我々に寄り添ってくれるような対策を政府、日本医師会に望みたい。
(葵)