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時の話題

地域医療を守るため求められる宿日直許可基準の緩和

府医ニュース

2022年4月20日 第2997号

 令和6年度からの「医師の働き方改革」では、時間外労働時間の上限規制、健康確保措置(勤務間インターバル・連続勤務時間制限)などの取り組みが求められている。中でも時間外労働時間の上限規制は、兼業・副業を含めた労働時間であるため、医師の派遣元、派遣先での宿日直許可の有無が課題となっている。
 宿日直許可は、令和元年に発出された医師・看護師等の宿日直に関する通知によるが、これは昭和22年に発出の「一般的許可基準」「医師、看護師に係る許可基準」により判断するとなっている。
 日本医師会は、医師の働き方改革が産科医療機関における宿日直体制にもたらす影響について、アンケート調査を行い2月16日に結果を公表。調査は昨年11月11日から12月6日の期間、大学病院の産婦人科および周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院の産婦人科に対して行い、52.3%から回答を得た。
 その結果、大学病院は9割を超える病院が宿日直の医師を派遣しており、派遣平均医師数は1施設当たり11.3人。一方、周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院で宿日直を行う医師を派遣しているのは1割程度、派遣医師数も3.8人にとどまっており、一般病院は大学病院から宿日直の派遣を受ける側であることが明らかとなった。
 また、勤務先での連続勤務は大学病院の約6割に上り、医師の偏在、移動距離の長さが関連しているものと考えられた。約4割がA水準、約1割がB・C水準の上限時間を超えていた。今後の派遣については、約半数が「最大限努力するが場合によっては制限する可能性がある」、約4割が「現時点では判断がつかない」と回答。派遣先の産科医療機関が宿日直許可を取得することは自院の診療体制を維持する上で「極めて重要」「重要」との回答が大学病院の9割を超えた。時間外労働時間の上限規制によって、「他の医療機関での診療応援に行けなくなること」「収入が減少することで常勤医が離職してしまうこと」が懸念されるとの回答が上位であった。
 大学から応援を受けている一般病院は、労働時間の上限規制によって医師の引き揚げや自院の業務負担の増加を強く懸念していることが示された。宿日直許可を受けるためには、通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。業務は、一般の宿日直業務(定時的巡視、緊急の文書または電話の収受、非常事態に備えての待機等)以外には、特殊の措置を必要としない軽度のまたは短時間の業務に限り、通常の勤務時間と同態様の業務は含まれないこと。宿日直手当の最低額は、1日平均賃金額の3分の1を下らないこと。宿直業務は週1回、日直業務は月1回を限度などとされている。
 宿日直許可は、一つの病院、診療所等において、所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等を限って与えることができ、労基署には「断続的な宿直または日直勤務許可申請書」を提出する必要がある。宿日直許可は、特に産科医療機関、2次救急医療機関においては、取得の有無が医療機能を維持する上で大きな課題となっている。2年後に迫った医師の働き方改革に向けて、多くの医療機関が宿日直許可を申請すると考えられるが、地域医療を守るためには要件緩和が必要と考えられる。