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府医ニュース
2022年4月6日 第2996号
暴力の
かくうつくしき
世に住みて
ひねもすうたふ
我が子守うた
今年2月24日にロシア軍のウクライナ侵攻が始まってから、頭の中でこの斎藤史(1909―2002)の短歌が繰り返し聞こえるような気がしています。
2008年9月、何気なくテレビをつけたら放送されていたNHK―BSの「あの人に会いたい」という番組で歌人の斎藤史が紹介されていて、印象に残ったのでノートに書き留めていた一首です。
「戦争という暴力が大義名分の下に華々しく行われている世界に住んでいる。今は幼い子どもが生きていくこれからはどんな世界になるのか。平和な世界で生きていってほしいと祈りながら一日中子守を歌っている」
私は、この歌をこのように理解しました。
調べていくと、この歌は直接には、昭和11(1936)年の二・二六事件に関して詠まれたものでした。陸軍の青年将校達が反乱を起こして当時の内大臣などを暗殺した事件で、当時陸軍の予備役少将であった作者の父は、反乱を起こした者達を支援したとして禁固刑に処され、さらには、作者の幼馴染であった将校達が反乱の首謀者として処刑されました。この事件の直後に作者は長女を出産しており、「ひねもすうたふ我が子守うた」はほぼ実景であったのではと思われます。
このように作者にとってあまりにも身近な重い出来事を詠んだ歌を現代の国際紛争に結び付けて普遍化することは、あるいは作者の本来の意図からはズレるのかもしれません。しかし、やはり私は、この歌が自分の思いと結びついて頭の中でリフレインするのです。
(瞳)