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時の話題

2025年から2040年に向けた医療提供体制の在り方

府医ニュース

2022年3月30日 第2995号

 国立社会保障・人口問題研究所によると、我が国では2025年に向けて高齢者、特に後期高齢者の人口が急速に増加し、その後も40年まで65歳以上の人口が緩やかに増加すると推定されている。22年から25年までは、人口の多い団塊の世代が後期高齢者になるため後期高齢者が急速に増加する。
 しかし、25年から40年にかけての65歳以上人口は、都道府県すべてにおいて増加するのではなく、東京都・神奈川県をはじめとする都市部を中心に26都道府県では増加するが、21都道府県では減少するとされている。また、75歳以上人口でみても17府県では減少し、特に大阪府が最も減少数が大きいと推定されている。
 その一方で、すでに減少に転じている15~64歳の生産年齢人口は、25年以降さらに減少が加速するとされており、人口減少・少子化問題は深刻である。現在、25年の地域医療構想の実現に向けて、2次医療圏単位ごとに調整会議が行われている。しかし、残念ながら新型コロナウイルス感染症などの新興感染症・災害医療などの有事の際の医療提供体制についての協議は行われず、コロナ禍前と同様、目標とする病床数に向けた数値の進捗状況の報告が中心であるように見える。
 国は40年を展望した25年までに着手することとして、地域医療構想に加えて医師・医療従事者の働き方改革の推進、実効性のある医師偏在対策の着実な推進を三位一体改革として行うとしている。24年度には、第8次医療計画、外来医療計画、医師の働き方改革が新たにスタートする。
 地域医療構想は「地域医療構想に関するワーキンググループ」、医師の働き方改革については「医師の働き方改革に関する検討会」、医師の偏在対策については「医師需給分科会」でそれぞれ議論されているが、いずれも相互に関連する改革であるため、他の会議の動向、進捗状況を見ながら議論が進められている。現在、各医療機関はいまだ収束が見いだせない新型コロナへの対応に多くのエネルギーを注がなければならない状況である。
 そのような中、これら三位一体改革が推進されているが、その議論の内容はあくまでもコロナ禍前の平時における状況でのものである。24年度からの第8次医療計画の記載事項に「新興感染症等の感染拡大時における医療」が追加されることになったが、具体的な議論はこれからである。
 これからの3年間、これら重要な医療政策を纏め上げる活発な議論が展開されると同時に、すでに25年から40年の医療の在り方についての議論が始まっている。新型コロナを経験した今、求められる医療政策は、単に人口動態に合わせた数合わせではなく、災害・新興感染症等の有事の際にも対応できる内容でなくてはならない。そのためには、積極的な人材育成とともに、十分な人員配置を可能とする診療報酬体系への転換が必要と考える。