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時事

新型コロナワクチン、注意が必要な誤情報

府医ニュース

2021年10月6日 第2978号

インフォデミックとの闘い

 厚生労働省から9月7日付で「新型コロナワクチン(mRNAワクチン)注意が必要な誤情報」が公開された。正しい情報を示すとともに、詳細は同省ホームページの「新型コロナワクチンQ&A」へリンクさせている。科学的根拠や信頼できる情報源に基づかない不正確な情報とされたのは、以下10項目である。
 ①ワクチン接種により遺伝子(染色体)に変化を生じさせる②ワクチン接種が原因で多くの方が亡くなっている③ワクチン接種が不妊症の原因となる④ワクチン接種が流産の原因となる⑤ワクチン接種により不正性器出血や月経不順が起こる⑥ワクチン接種で(接種した本人や周囲の人が)コロナウイルスに感染する⑦ワクチンを接種した人が変異ウイルスに感染すると重症化しやすい(抗体依存性感染増強〈ADE〉になりやすい)⑧通常の臨床試験のプロセスが省略されている⑨臨床試験が終わっていないので安全性が確認されていない⑩動物実験でワクチンを接種したすべての動物が死んでいる。
 同「Q&A」にはコラム欄もある。7月26日付の「誤情報に惑わされないために。情報リテラシーの重要性と正確な情報の受け止め方」では、誤情報や偽情報の広まりに関し、発信者と拡散者、両方の原因を挙げている。前者の背景にはMICEモデル、すなわち、(1) Money(金銭目的)、(2) Ideology(個人的な主義主張)、(3)Compromise(例えば過去の主張との整合性や周囲への妥協)、(4)Ego(自己承認欲求)――の4要素を紹介し、後者では善意の関与に言及している。
 インターネットやSNSによって、情報拡散の規模と速度は飛躍的に高まった。同じ意見の人の情報ばかりをネットで共有することで、自分の意見が増幅・強化される「エコーチェンバー」現象が起きると、それ以外の認識が間違っているように思えてきて、社会の分断にもつながるとされる。更に、デマによって社会が分断されるのではなく、元々社会的に分断された人々の心の中にデマが入り込み、一層分断を促進するとの説もある。
 真実を知っているのは自分だからもっと広めなければと考える人がいる一方で、ワクチンデマが、ネット配信の広告料目当ての一種のビジネスになっているとの指摘もある。
 WHOは、信頼性の高い情報とそうではない情報が入り混じって不安や恐怖とともに急激に拡散され、社会に混乱をもたらす状況を「インフォデミック」と命名し注意喚起を行ってきた。そして、ソーシャルリスニング(SNS上の声を分析し、対策などに生かす手法)のアプローチを取り入れたり、世界の多様なグループと協力して、コミュニティに合う形で情報を届けるべく活動を行っているとのことである。
 誤情報対策には、まずは一人ひとりが情報を鵜呑みにせず、周囲に誤った情報を拡散させないことが重要とは言われているが、背景は複雑で根も深く、淡淡と正確な情報を提示するだけでは済まないのが悩ましい。(学)