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令和3年度 近医連定時委員総会

府医ニュース

2021年10月6日 第2978号

山積する医療課題 議論重ね国へ

 近畿医師会連合(今期委員長=茂松茂人・大阪府医師会長)は9月5日午後、令和3年度定時委員総会を府医会館で開催した。今回も昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策の観点からオンラインで実施するとともに、分科会は見合わせた。委員総会後には、2題の特別講演を行った。

 栗山隆信・府医理事が司会進行を務め、澤芳樹・府医副会長による開会宣言後、茂松委員長があいさつ。新型コロナ対策が長期化しており、現在は自宅療養者への対応に力点が置かれていると言及した。その上で、府医では、『新型コロナウイルス感染症にかかる自宅療養者への対応ガイド』の作成をはじめ、「往診体制の強化に取り組んでいる」と報告。また、今後の地域医療構想では、新興・再興感染症の流行など有事に備えた病床確保が必要と指摘した。あわせて、外来機能報告制度やかかりつけ医の在り方、医師の働き方改革など、今後の医療提供体制を左右する課題が山積しており、近医連で議論を重ね、国へ提言することが重要だと強調。一層の協力を要請した。

すべての議案を承認

 前期主務地としてあいさつした松井道宣・京都府医師会長は、昨年度は新型コロナの影響を受け、ウェブでの会合が多くなったと振り返りつつも、「事業計画は遂行できた」とし、謝辞を述べた。更に「医療者が一丸となって難局を乗り越えなければならない」と語り、今年度の近医連運営に期待を寄せた。
 その後、3年度の役員選任を報告。委員長には茂松・府医会長、副委員長に空地顕一・兵庫県医師会長および中尾正俊・府医副会長、常任委員には安東範明・奈良県医師会長と平石英三・和歌山県医師会長、監事に越智眞一・滋賀県医師会長ならびに松井・京都府医師会長が就任した。続いて、中川俊男・日本医師会長、吉村洋文・大阪府知事、自見はなこ・参議院議員より事前に寄せられたビデオメッセージが披露された。
 その後、京都府医師会より「2年度近医連会務報告」の説明があり、議事に移行。今年度に関しては、事前に各府県に資料が送付され、「議決権行使書による採択」が実施されており、既にすべての医師会より賛成の回答がなされていた。そのため、①2年度近医連歳入歳出決算②3年度予算および同事業計画――は、「原案どおり可決されている」と栗山理事より補足説明があった。続いて、高井康之・府医副会長が、6項目の決議を読み上げ、拍手で採択された。
 最後に、次期主務地医師会長として空地・兵庫県医師会長があいさつ。コロナの収束が見えない中、「医師会の役割は非常に大きい」と力説。コロナでは、かかりつけ医としての対応課題も見えており、次年度はともに検討したいと述べた。なお、次期は、4年9月4日に神戸市で開催予定。

特別講演

 茂松委員長が座長を務め、最初に西浦博氏(京都大学大学院医学研究科教授)が、「新型コロナウイルス感染症の数理疫学」と題し、様々なデータを基に新型コロナの予測などを示した。
 次いで、朝野和典氏(大阪健康安全基盤研究所理事長)が、「ウィズコロナ時代の診療の新展開」と題して登壇。現状や今後の課題を示した。朝野氏は、第4波を経験したからこそ、第5波への備えを強化できたと指摘。今後は軽症者への対応がカギになるとし、「(診療の)ボールは医師会に投げられた」と結んだ。

決   議

 新型コロナウイルス感染症が世界を席巻した。感染発生から1年半が経過したが、未だ収束する見通しは立っていない。
 今般の新型コロナウイルスの感染拡大で、感染症に対する日本の医療提供体制の脆弱性が露呈した。国は感染症対策を強化することなく、高齢者人口の増加への対策に偏重した医療費抑制を企図し、急性期病床の削減に固執した地域医療構想を推進してきた。結果として、医療が逼迫し、必要な医療が受けられない非常事態を招いた。
 本来、感染症対策は政策医療であり、有事の際には国の責務として医療提供体制を確保し、保健所機能の強化を図るべきである。
 国は、コロナ禍による財政悪化を根拠として財政健全化を掲げて、保険給付範囲の見直しなど国民負担を増やす施策の実施を目論んでいるが、財政論を優先した医療政策の誤りにより、必要な患者を救えない医療崩壊は繰り返してはならない。
 医療は規制緩和すべき領域ではなく、初診からのオンライン診療は、医療の質と安全性を確保するため、対面診療を原則とすべきである。後期高齢者の医療費窓口負担を2割に引き上げる医療保険制度改革関連法が成立したが、受診抑制による健康への影響を十分に検証すべきである。
 我々は、コロナ禍の教訓をもとに、国民医療を守る使命観に基づき、いかなる事態にも対応し、将来にわたり我が国の医療制度を維持・発展させるため、一致団結して政府に以下の点を要望する。


一、医療費抑制を企図した地域医療構想を見直し、有事においても対応できる急性期病床を確保すること
一、有事に備えた医療機能の充実と地域の実情を踏まえた働き方改革を推進すること
一、有事においても医業経営が成り立つ診療報酬体系を構築し、全国一律の出来高払いに基づく診療報酬制度を堅持すること
一、オンライン診療は、医療の質や安全性を確保するため、初診時は対面診療を原則とすること
一、後期高齢者の窓口負担割合引き上げに伴う受診抑制を十分に検証すること
一、現役世代の負担軽減に配慮し、国民負担の増加を招くことなく、社会保障の財源を確保すること
令和3年9月5日     
近畿医師会連合定時委員総会