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時事
府医ニュース
2021年8月25日 第2974号
7月30日、厚生労働省から令和3年版厚生労働白書が公表された。今年のテーマを表す第1部のタイトルは「新型コロナウイルス感染症と社会保障」である。国民生活への影響と対応について、リーマンショック時との比較も交えて分析を行っている。
(1)仕事・収入:▽最初の感染拡大期での経済活動全般を止める対策により、経済に大きな影響(4~6月期のGDP成長率が、前期比年率換算でマイナス28.6%)▽令和2年4月に休業者が急増。以降、完全失業率は緩やかに上昇▽非正規雇用、特に女性、宿泊・飲食業や生活関連サービス・娯楽業等の特定業種で雇用者数が顕著に減少▽雇用維持支援施策により、リーマンショック時に比べ、完全失業率の上昇は抑制▽所定外給与(超過労働給与)が大きく減少。家計所得は、各種給付金等の経済的支援の影響もあり、リーマンショック時と比べて影響は小さい▽被保護世帯の増加は、これまでのところリーマンショック時に比べ抑制。
(2)働き方と家庭生活:▽就業者の約3分の1がテレワークを経験▽教育、学習支援業をはじめ、テレワーク実施率が高い業種で労働時間の減少傾向が見られたが、仕事と生活の区別に課題▽家事・育児時間の絶対量が増加し、男性はテレワークにより軽減された時間を充て、女性は余暇を削って対応。女性の負担が相対的に増え、生活満足度がより低下。
(3)自粛生活:▽学校休業やクラブ活動の停止等で、子どもが身体を動かす機会が減少、生活リズムにも乱れ▽ストレス反応があったと答えた子どもが7割超▽高齢者の交流機会が減少、認知機能低下やうつ傾向の増加が懸念▽「集う」に代えて、フードパントリー、戸別訪問(アウトリーチ)など新しい手法での「つながり」の再構築▽7月以降、自殺者が増加傾向。特に女性と若者の増加が著しい▽自宅で家族と過ごす時間が増える中、DVの増加が懸念▽年間婚姻件数は大幅に減少、妊娠届数も5~7月に大幅な減少。
(4)オンライン化:▽教育現場でのオンライン化の浸透▽行政手続のオンライン利用率の引き上げへの取り組み▽オンライン診療、オンライン服薬指導の特例を実施▽通いの場でのテレビ電話やアプリを活用した取り組み。
(5)医療・福祉:▽受診控えのほか、健診・検診や小児の予防接種の状況が低下▽医療費も4~5月で減少、医療機関の経営に大きな影響▽介護サービスでは特に通所系で一時的に大きな影響。
そして、社会的危機における社会保障の役割について、5つの課題、すなわち、①危機に強い医療・福祉現場②デジタル技術の実装化③多様な働き方を支えるセーフティネット④性差によって負担に偏りが生じない社会づくり⑤孤独・孤立を防ぎ、つながり・支え合うための新たなアプローチ――を示し〝セーフティネットの重層化〟を図ることが重要としている。
危機の底はまだ見えない。意識の共有を図り、経験を生かしつつ新たな技術を加え、知恵を集めたい。
(学)