
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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勤務医の窓
府医ニュース
2021年7月28日 第2971号
本稿が読者の皆様に届く頃、COVID―19の感染状況と医療の逼迫はいかなる様相を呈しているのでしょうか。数十年に1度と言われる豪雨災害がこの数年、毎年発生して「そんなバカな!」と思うところに100年に1度と言われるパンデミック。この難局を乗り切れば今後100年は本当に安泰なのでしょうか。
さておき、臨床研修指定病院では今年も来年度の研修医採用活動が本格化してきました。6年次医学生にとり、昨年は学外臨床実習や病院見学が十分できず、臨床研修指定病院選択における戸惑いが憂慮されます。情報取得はSNSでどこでもいつでも可能となりましたが、臨場で感じる空気やスタッフの熱量など〝自分の体感〟に勝るものは無いと確信しています。大企業がウェブ方式で採用した今年4月の新入社員が、「出社してみたら期待していた会社の雰囲気と違う」との理由から1週間で退職者が続出したという報道は、衝撃でしたが理解はできました。
一方、学生/研修医教育の場で現在も引用される2011年の論文では『医学知識が倍になる時間(doubling time)は1950年には50年とされていたのに対して2020年には73日となる』(Densen P. Challeng-es and Opportunities Facing Medical Edu-cation. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011; 122: 48-58.)と予測されていたものの、医学知識の取得はインターネット検索エンジンで容易に行える環境になりました。日々更新される膨大な医学情報から、正しい知識を取捨選択して活用できる能力を身に付けることが本質ですが、将来は人工知能(以下、AI)を駆使すれば無駄な能力と化すことになります。それでも例えば『ガイドライン(EBM)に疑問を持たずその根拠となる論文の検証を自身で行わないまま“鵜呑み”にすること』は『AIが創出するSNS上の巧妙なデマ、フェイクを疑問も持たずに信じ込むこと』と同等な過ちとして認識すべきと考えます。
最後に、IT社会の賜物として進化し続けるAIの医療応用を〝光”とすれば、軍事的先端技術として〝影”の応用にも利用され人類が陥れられることが無きよう祈るのみです。1968年の幼き頃観た難解な映画「2001年宇宙の旅」の情景(ボーマン船長と人工知能HALとの攻防シーン)が重なり甦った次第です。
関西電力病院副院長
藤本 康裕
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