TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

星と願いと

府医ニュース

2021年7月7日 第2969号

 今年も、笹飾りの季節になった。先日、健診でこども園に行った時、色とりどりの短冊のひとつに、かわいい文字の願い事を見つけた。
 「はやくコロナがおさまりますように。」
 親御さんかおじいちゃんおばあちゃん、周りのおとなの会話を耳にしたのだろうか。ガウンにグローブ、マスクとフェースガード姿で健診をする医師は、この子達の瞳にどのように映っているのだろう。
 七夕は、星に因んだ行事だ。織女星と牽牛星、2つの星はそれぞれ、「ベガ」「アルタイル」という一等星で、旧暦の7月7日、天の川を挟んでもっとも光り輝いて見えることから、織女と牽牛の再会という願いがかなうといわれている。

真砂なす
 数なき星の
  其の中に
   吾に向ひて
    光る星あり

 正岡子規遺稿集『竹乃里歌』に収められている、十連作「星」の冒頭の短歌だ。砂のように無数にちりばめられた星の中から、私に向かって光る星がある。彼方から自分を見つめてくれている星、自分だけを照らしてくれる星。病床でも明日への希望を失わず創作した子規らしい歌だ。
 願いを胸に思い続けるあらゆる人に、「吾に向ひて光る星」が存在すると思う。短冊を書いた子ども達にも、現在闘病中の方やその家族の方々にも、そして、日常の診療を行いながら、ワクチンの個別・集団接種に奔走する、医療に携わるすべての人にも。(颯)