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時の話題

ヤングケアラーの現状

府医ニュース

2021年7月7日 第2969号

求められる啓発、早期把握、支援強化

 家族が病気、障害、高齢などのために、その介護や世話を行っている子どもをヤングケアラーと呼ぶ。国はこれまで、各市町村の要保護児童対策地域協議会(以下、要対協)を対象にヤングケアラーの実態調査に取り組むとともに、彼らの早期発見・支援に活用するためのアセスメントシートやガイドラインの作成などを行ってきた。
 厚生労働省、文部科学省の共同プロジェクトチームが「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」を行い、5月17日に報告書を公表した。これは、学校や地域などで早期にヤングケアラーを把握し、支援につなげる体制を強化するものである。
 調査は、要対協、中高生、および中学校、高校に対してウェブでのアンケートにより行われた。報告書では、要対協がヤングケアラーという概念について93.3%が認識しているものの、実態を把握しているのは30.6%であった。把握していない理由として、「家族内のことで問題が表に出にくい」が、81.8%と多かった。報告書に盛り込まれた施策は、今年度の「骨太の方針」に反映され、早期の実施を目指すとしている。
 4月に公表された中高生への実態調査では、世話をする対象の家族は「兄弟」が最も多かった。そのため、支援として介護保険や障害福祉など、既存の公的サービスだけでは負担軽減につながりにくいと考えられるため、家事支援サービスを提供する制度の創設が検討された。
 一方、当事者である子ども自らがSOSを出す困難さも明らかとなった。役所などの公的機関や専門家への相談は、様々な事案の支援制度として一般的に行われているが、子どもにとっては心理的ハードルが高いと考えられるため、アクセスし難く十分ではない。そのため、SNSを利用した相談や、オンラインでの当事者の集いなどを推進する必要があるとされた。また、こうした活動を行う民間の支援団体もあることから、これらの支援団体と自治体の連携に補助金を出すことなども今後の対策として想定された。
 昭和の3世代同居などの大家族が当たり前の時代には、「家族の世話は家族がするのは当然だ」と考えられていた。その後、核家族化の進展などにより、家族による高齢者介護が困難となり、介護保険制度の浸透とも相まって家族以外のサービスを受けることの抵抗感は少なくなっている。しかし、ヤングケアラーの中でも「家族の世話をするのは当然」と考え、負担の重さを自覚していない子どもも多い。
 今後、ヤングケアラーの早期発見に向け、ケアマネジャーや相談支援専門員、医療ソーシャルワーカー、スクールソーシャルワーカーといった各分野の専門職への研修など、人材養成の強化も施策の柱とされた。いまだ十分ではないヤングケアラーについての正しい理解の啓発、早期把握、支援強化が求められる。