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時の話題
府医ニュース
2021年6月30日 第2968号
65歳以上に対する新型コロナウイルスのワクチン接種が加速・本格化している。地域による違いはあるが、7月末頃には一段落する目途が立ち、並行して医療従事者、高齢者以外の国民に対する接種が今後進められる。各自治体は、地域の実情に応じた工夫をし、地区医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会などの医療関係団体も積極的に協力し、ワクチンの迅速で安全な接種を目指している。
ワクチンは、新型コロナウイルス感染症対策の切り札として待ち望まれたことであるが、ようやく本格的に動き出した。一方で当初から予想されていた新たな変異ウイルスが次々と確認されている。変異ウイルス感染者には必ずしも直近の海外渡航歴があるわけではなく、感染経路が明らかでないケースもあるが、海外からの持ち込みによるものが主因であると考えられることから、あらためて水際対策の見直しが急務である。
5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異型の名称にギリシャ文字のアルファベットを使用する方針を示した。これまで変異株については、「イギリス株」「インド株」など、最初に確認された国名で表現されていたが、WHOは「特定の地名を用いることは、汚名を着せ、差別的になる。これを避けるため、各国当局やメディアなどには新たな呼称を使うように奨励する」として、特定の国や国民への差別的な扱いを防ぐための措置と説明している。
現在、WHOは「懸念される変異型」としてイギリス、南アフリカ、ブラジル、インドで最初に確認された4つの変異型を認定している。今後はそれぞれ「アルファ株」「ベータ株」「ガンマ株」「デルタ株」と呼称することになる。学術名としては、ゲノム解析によりイギリスで最初に確認された変異型は「B・1・1・7」、南アフリカは「B・1・351」などと名付けられている。
今後も学術名自体は専門家の間では使われ、ギリシャ文字呼称は一般向けとなる。アルファ変異型ウイルス「B・1・1・7」は、従来株より感染力が70%程度強い可能性、実効再生産数は、0.52から0.74程度高い可能性、致死率は60%程度高い可能性が示唆されている。また、感染者における0~17歳までの子どもの割合が従来株より2倍弱に増加していることが報告されている。
実際、第4波とされる4月以降、新規感染者数、重症者数、死亡者数の増加、更には重症に至る経過が急速であり、これまでの第3波までとは明らかに様相が異なっていた。そのため、重症病床、コロナ専用病床として医療体制を整備していたが、特に5月のGWを挟む4月中旬から5月中旬の期間は、大阪の医療提供体制は脆くも崩れていたと言わざるを得ない。
今後、第5波を想定した変異株による急速な感染者の増加・重症化にも対応できる医療提供体制の再構築が必要であると考える。