
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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ミミズクの小窓
府医ニュース
2021年3月31日 第2959号
ミミズクは再び森へ還ることになった。前回森へ帰還したのは平成25年8月28日号であった。そして1年後に楽園追放となって26年8月27日号で復活した。だが人が生まれ落ちた時からいつかは土に還る定めを背負っているように、ミミズクもいつかは〝森に往きてまた還らず〟なのだ。なお今回は楽園から地上に向けての再度の追放はないが、楽園からの〝地獄流し〟(出典「地獄少女」17年)はあり得る。くわばら、くわばらである。
府医ニュースに舞い戻って6年半、最後に出会った新型コロナウイルス・パンデミックはやはり衝撃であった。この新しい感染症は、その感染力や死亡率以上の〝災厄〟をもたらした。日本はもとより、世界中がひっかき回された。後手を踏んだ上に忖度に縛られたWHO、いびつな国際情勢、実情に合わない感染症法の縛り、お祭り騒ぎしかできないメディア、無秩序なSNSなどが相まって、〝新型コロナ狂想曲〟とも言うべき状況に陥った。この間、日本の医療体制の強さも弱さも、行政・医療機関・医師同士の絆の強さも弱さも、さながら玩具箱をぶちまけたごとく、白日の下に曝された。
それもこれも、新型コロナが〝ひとつの病気〟の則を超えて〝隠喩としてのコロナ〟となり、〝言葉以上の意味と脅威〟が広がったこと、そして新たな疾患であった故の科学的根拠の乏しさのなせる技であった。文献は洪水のような勢いで出版されたが、玉石混合を絵に描いたごとくであり、更に最もレベルの低い根拠である「権威者の意見」をも差し置いた〝非権威者や素人の単なる思いつき〟がメディアを通じて跳梁跋扈することになった。かくして根拠は〝科学ではなく声の大きさ〟で決まることとなった。
しかし、一時の混乱はあったものの、日本の、そして大阪の医療は踏みとどまっている。例えゆっくりとではあっても、秩序の回復に向かうとミミズクは信じる。そのhappy endingを見られないのはちょっぴり残念だが致し方ない。〝Life isn't long enough for medicine〟そう、医学のたとえ片鱗でも分かるには人生は短すぎるのだ……。あっ、やっぱり最後まで盗作でまとめてしまった。原文は軍医でもあった英国の作家、かのサマセット・モーム先生である。まっ、同業者だから大目に見てくれるだろう。それでは大阪府医師会諸兄姉のご多幸を祈念しつつ、ミミズクの小窓を閉じたいと思う。ご愛読に深謝……。
令和3年3月16日、ミミズクこと片桐修一先生(豊中市)が永眠されました。70歳でした。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
片桐先生は、平成19年2月13日~26年6月26日まで本紙編集委員会委員を務められ、主に「時事」をご執筆いただきました。健康上の理由で委員を退任された後もご執筆活動を精力的に続けられ、「ミミズクの小窓Returns」として、多くの原稿をお寄せいただきました。あらためて感謝申し上げます。
片桐先生の生前のご功績をたたえ、本コラムをまとめた冊子を作成いたします。ご入用の会員は大阪府医師会広報課(電話06―6763―7013)までご連絡ください。