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時の話題

医療・介護分野での有料職業紹介業者の動向

府医ニュース

2021年3月31日 第2959号

医師のキャリア形成など見直しが必要

 医療・介護分野では、施設基準を満たすために有資格者の人材を継続的に確保する必要がある。しかし、慢性的な人材不足により、通常の求人では必要な人員を満たすには困難なことが多く、有料職業紹介業者を利用せざるを得ない施設が少なくない。そのような状況で、一部の紹介業者での行き過ぎた行為が問題となっている。
 厚生労働省は、改正職業安定法(平成30年1月1日施行)が1年を経過したことから、その施行状況を把握するとともに、特に人材不足が顕著である医療・介護分野における職業紹介事業者、求人者、就職者を対象に職業紹介に係る実態を把握し、職業紹介事業の適正な運営を確保すべく、今後の指導監督業務等に活用することを目的としたアンケート調査の結果を令和元年12月に公表した。
 調査対象は、求人事業所3976事業所(内、医療分野2112事業所)。就職者6118人(内、医療分野4224人)。職業紹介事業者600事業所。調査は令和元年6月~8月の期間にウェブで行われた。
 結果の概要は、求人者が民間職業紹介事業者を利用したのは、医師55.8%、看護師・准看護師78.7%、看護助手39.5%、薬剤師35.3%。利用する理由は、ハローワークなど他の採用方法では確保できなかったためが71.1%で最も多く、次いで確実に求職者を紹介してもらえる(40%)、迅速に確保できる(38.4%)などが多かった。
 採用1件あたりの手数料額は、平均で医師276.6万円、看護師・准看護師91.8万円、看護助手58.7万円、薬剤師122.5万円。賃金に占める割合は、平均で医師23.8%、看護師・准看護師19.1%、看護助手19.3%、薬剤師22.5%。手数料については、経営上負担となっており、高いと考えているが69.2%、経営上負担となっていないが、高いと考える24.1%と合わせて93.3%が高いと考えていた。
 また、離職率については、紹介業者経由ではそれ以外と比較すると高く、医師については、3カ月以内が紹介業者経由では13%(以外0.8%)、6カ月以内が19%(3.6%)であり、他の医療従事者についても同様であった。これらのことから、国に対して、求人事業者に対する手数料の適正化(64.2%)、ハローワークによる紹介の充実(63.1%)の要望が多くみられた。
 就職者の就職手段は民間紹介業者の利用が最も多く、次いでウェブでの求人サイト、ハローワークが多かった。このような状況は、複合的な要因によるものと考えられるが、医師については、新医師臨床研修制度による医局制度の崩壊が大きな要因と考えられる。法律で義務付けられた前期研修後、3年目の医師が紹介業者を利用している例も散見される。手数料の原資は言うまでもなく医療費である。
 今回、ようやく国が実態調査に乗り出し、今後、手数料、事業運用の適正化が期待されるが、背景にある医師のキャリア形成、需給、配置などの制度見直しが必要な時期に来ていると考える。