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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2021年3月3日 第2957号
「在宅医療における死因診断に関する研修会」が1月30日午後、オンライン形式で開催された。本研修会は、「大阪府在宅医療総合支援事業」の一環として、適切な死因を特定する死因調査体制の確立に向け、制度の更なる充実を目的に実施。大阪府医師会員、警察医・監察医や、在宅医療に関わる多職種ら約200人が聴講した。
当日は、宮川松剛理事が開会あいさつを行い、松本博志氏(大阪大学大学院医学系研究科・医学部法医学研究教授)が「在宅医療での看取りと死亡・死因診断、死後診察について」と題して講演。死後診察の意義や留意点などを解説した。
まず、在宅医療の進展とともに、医師の業務のひとつとして、死亡後に改めて診察する「死後診察」の重要性が増すと指摘。特に独居高齢者が多い大阪においては、在宅での異状死が増えることが見込まれるとし、医師の専任事項として「死の判定」「死因診断」をしなければならないと述べた。また、平成29年厚労省通知により、訪問看護師の死後診察の補助が可能になったことに触れ、今後の看護師の法医学教育の重要性を説いた。
続いて、遠隔地からの死亡診断が可能になったガイドライン(厚労省通知「情報通信機器〈ICT〉を利用した死亡診断等ガイドライン」29年9月)を紹介。在宅医療の終末期における所見取りの手法を詳説した。また、通知のポイントとして、▽在宅医療の終末期において、看護師による死後診察の補助が認められたこと▽死後診察の内容が定義されたこと――を挙げた。
死亡確認においては、①聴診・携帯型心電図による「心停止の確認」②聴診・肉眼的観察での「呼吸停止」③瞳孔の観察から「対光反射の消失」――を5分以上の間隔を開けずに2回確認することが必要とした。一方、死後診察結果による死因診断について、外表検査における留意点を自身の経験を交えて説明。頸部の索痕や眼球・眼瞼結膜の溢血点、注射痕を注意深く観察すべきと述べ、家族や介護者の説明と照らし合わせるよう促した。更に、「外部所見のみでは判断しにくい点」に関して、死斑、死体硬直、角膜混濁、死体温などを「重要な死体現象」とし、それらから推測される事象などを詳しく解説した。
最後に、今後の多死社会を見据え、死亡診断を行う医師は改めて法医学等の復習が必要と強調。大阪大学が主体となった、医師・看護師・ソーシャルワーカーが参加できる「死因究明学」大学院高度プログラムを紹介し、参加を依頼した。