
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
府医ニュース
2020年12月2日 第2948号
大阪府医師会は11月13日午後、エイズ予防財団受託事業として、令和2年度「HIV医療講習会」を府医会館で開催した。同講習会は新型コロナウイルス感染症拡大防止を鑑み、聴講者なしで実施。当日の模様は、府医ホームページで公開を予定している。
白阪琢磨氏(大阪医療センター臨床研究センター長)が座長を務め、宮川松剛理事が開会あいさつ。コロナ禍における医療提供体制確保への協力に謝意を表すとともに、体制の更なる拡充に向けて尽力すると述べた。
続いて、上平朝子氏(同センター感染症内科長・感染制御部長)が「HIV感染症――治療の進歩と病診連携」と題して講演した。上平氏はまず、早期の抗HIV治療開始が、免疫の改善や重篤な合併症の防止を図り、予後の改善に寄与すると報告。すべての感染者に対し、できるだけ早く治療を開始することを推奨した。一方で、長期にわたる治療に向けて、服薬の意思や費用の問題など、「患者自身に治療を開始する準備ができているかの評価が不可欠」と指摘。教育カウンセリングや経済的支援など、十分な準備を行うことが求められるとした。また、予後の改善で患者の年齢層が上昇したことにより、生活習慣病やポリファーマシーへの対応など、高齢患者を支える医療体制が必要になったと説示。今後、病診連携が一層重要になると結んだ。
次いで、古林敬一氏(そねざき古林診療所長)が「新型コロナ流行下のHIV感染症、性感染症について」と題して、診療時の注意点を詳述。新型コロナと性感染症の共通点に、①「夜の街」関連で感染する人が多い②感染しても症状が出ない場合がある③無症状者も感染源となる――を挙げ、性感染症で来院する患者は新型コロナの感染リスクも高いとの見解を示した。また、女性の淋菌感染症の報告数と完全失業率の相関を紹介。コロナ禍による景気の低迷から、性感染症の増加が懸念され、その動向に注視しなければならないとした。古林氏は更に、梅毒の診療のポイントを解説。基本的には無症状であるが、全科にわたる病変が出現する上、梅毒と結びつきにくく、誤診や見逃しを防ぐために経時的な変化を評価する必要があるとまとめた。