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周産期医療研修会

府医ニュース

2020年11月25日 第2947号

新しい胎児治療の取り組みを解説

 大阪府医師会は10月31日午後、大阪産婦人科医会との共催により、令和2年度第3回周産期医療研修会を府医会館で開催(大阪府委託事業)。今回は「日本で始まる新たな胎児治療」をテーマに実施し、周産期医療に従事する医師約70人が受講した。
 開会にあたり笠原幹司理事は、「大阪府における周産期緊急医療体制は全国的にみて高水準に達している」と述べ、日頃の協力に謝意を表した。また、今後も体制の更なる充実に向けて邁進するとし、一層の協力を求めた。
 講演では、吉井勝彦氏(千船病院長)と遠藤誠之氏(大阪大学医学部教授)が座長を務め、渡邊美穂氏(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座小児成育外科学助教)が「本邦における脊髄髄膜瘤胎児手術にむけての取り組み」と題して登壇。まず、出生前診断の進歩に言及し、胎児治療の対象となり得る疾患として脊髄髄膜瘤などの重症例を挙げた。また、胎児治療の倫理・適応を示し、脊髄髄膜瘤は「胎児治療によって、出生後に治療するよりも児の予後が良くなる」と指摘した。生後髄膜瘤手術では、髄膜瘤感染を予防する一方、妊娠後期には脊髄神経損傷は不可逆的なものになると説明。そのため、脊髄髄膜瘤の胎児手術は有効な治療法であるとし、日本での胎児手術の準備状況を解説した。あわせて、胎児手術を成功させるためのポイントとして、▽短時間・スムーズな手術施行▽密な連携▽トラブル発生時の適切な判断・対応――などを挙げ、多分野の専門家がチームとなって取り組みを進めている状況を示した。
 続いて、左合治彦氏(国立成育医療研究センター副院長兼周産期・母性診療センター長)が「先天性横隔膜ヘルニアの胎児治療」に関して講演。胎児治療の適応疾患を提示した上で、先天性横隔膜ヘルニア(CDH)の病態・胎児治療の軌跡を説明した。重篤なCDHについては生後の治療では限界があるとし、胎児治療法として胎児鏡下気管閉塞術(FETO)を紹介。また、日本におけるFETOの取り組みや早期安全性試験の成績、欧州を中心として進行しているランダム化比較臨床試験などを概説した。FETOの今後の課題としては、▽施行施設の拡大▽施行のためのトレーニング▽胎児気管バルーンの入手困難▽保険収載――を挙げたほか、胎児治療の質向上のためには胎児治療の全国登録システム、胎児治療後の長期フォローアップが求められると締めくくった。