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時事

電話診療・オンライン診療の実績の検証結果

府医ニュース

2020年11月25日 第2947号

便利さよりも信頼関係構築が基本

 11月2日、厚生労働省「第11回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で、7月から9月の電話・オンライン診療の実績の検証結果が報告された。
 電話や情報通信機器を用いた診療を実施できる医療機関は、10月末時点で全体の15%であった。申請は4月に開始されてから6月まで増加したが、その後は横ばいで、以前からオンラインの準備をしていた医療機関が申請したと思われる。この中で、初診や受診歴のない患者の診察件数は5月が飛び抜けて高かったが、以降は横ばいになっている。人口10万人対比の申請数は山形が最も多く、徳島、高知、長野、長崎と続く。この結果から、オンライン導入の必要性に迫られている医師過疎地の実情が伺える。初診からのオンライン診療件数が5月にピークに達した後に減少したことは、フィードバックが働いたということであろう。
 年齢階層別では、電話・オンラインとも50歳までで90%を占めており、高齢者には親しみにくいのではないかと思われる。ここで注目すべきは、10歳までが3分の1を占めていることで、小児科・耳鼻科の受診控えとは対照的である。10歳までの受診は、母親の判断が大きく作用すると考えられ、オンラインでの意思疎通に慣れた母親世代のコロナ観を分析することは、新しい時代の小児科や耳鼻科の方向性を示すことになるのではと考える。
 7~9月の検証では、全年齢を通じて急性期疾患が9割以上であり、かつ過去の記録がある症例は14歳までは8割、15~64歳は半分、65歳以上は7割であった。つまり、感染症でオンライン診療を受けた患者の半数以上は、身近なかかりつけ医を選んだと言える。また過去の記録の有無に関しては、電話・オンラインのいずれも6割前後が「記録あり」であったが、過去の記録があるもののうち、詳細な記載があったものは14歳までが最も多く96%を占め、年齢が上がるにつれ少なくなり、65歳以上では3分の2まで下降した。小児科領域では詳細な記録を元に診療することが、母親の信頼を勝ち得るということであろう。オンラインという不確定要素が強い世界では、信頼関係ができた医師にしか打ち明けていない対話の中から、どれだけ自分の子どものことを思ってくれているかという気持ちが伝わるかが鍵になるのではないか。
 検討会ではあわせて、新型コロナによる特例措置における要件の遵守について検証された。4月10日付の厚労省事務連絡で、①初診に麻薬および向精神薬の処方をしてはならない②基礎疾患の情報が把握できない場合の処方日数は7日間を上限とする③同様の場合、ハイリスク薬を処方してはならない④対面による診療が必要と判断される場合は、速やかに対面診療に移行する――と示されたが、初診から向精神薬が処方されている例があったため指導されている。また、東京から大阪の医療機関を受診したような遠方診療も少なからずあった。対面受診が勧奨された件数は非常に少ないが、発熱、頭痛、咳嗽など重症かもしれない例が含まれている。7~9月の処方薬の内容は、鎮痛解熱剤、鎮咳薬、去痰薬、抗アレルギー薬、軟膏、抗菌薬、ステロイド軟膏と続き、一般外来における急性期疾患の対応と同じであった。この傾向は電話とオンラインでは変化ない。軟膏とステロイド軟膏が、抗菌薬と順序が入れ替わっていたことは、オンラインが視覚的である利点によるものと推測する。
 以上の結果をどのように解釈するかであるが、非常事態下でのオンライン診療であることを念頭に置く必要はある。圧倒的に多いのは急性感染症であり、内科と小児科に集中している。感染症の患者では、投薬で経過を観たいというような事例で使われたのであろうか。外来予約患者の合間を縫ってオンラインを対応するにしても、患者が多くなれば当然順番待ちが発生する。この時、待合室であれば急変時すぐに処置ができるが、遠隔地であれば治療は当然遅れる上、オンラインでは症状の変化は見えない。また一度の診療に時間がかかる患者がいたとしたら、予約枠の意味はなくなる。だから患者が多くなれば、オンライン診療は外来と別枠の体制で臨む必要があるかもしれない。実際、先行する諸外国の例をみても、場所を限定するなど、数々の条件で縛られている。オンライン診療は電話診療と大差があるとは思えず、融通が効かない部分がありそうである。人間関係が成立していることが問題点を克服する唯一の解決策のような気もする。
(晴)