
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2020年10月7日 第2942号
近畿医師会連合(今期委員長=松井道宣・京都府医師会長)は9月6日午後、令和2年度定時委員総会を開催した。当日は、テレビ会議による協議のため、例年と異なり分科会は執り行わず実施。委員総会後には、新型コロナウイルスに関連した特別講演2題が催された。
冒頭、松井委員長があいさつ。インフルエンザ流行期に備え、厚生労働省が発熱患者の対応について、「かかりつけ医などの地域で身近な医療機関等を相談・受診し、必要に応じて検査を受けられる体制」の整備を都道府県に求めていることを問題視。新型コロナの院内感染が発生した場合の補償などが、いまだ解決されていないと言及し、近医連で情報を共有して、効果的な対応ができるよう意見・要望を発したいと協力を呼びかけた。また、8月末の安倍晋三首相の辞任表明にも触れ、次期政権には少子高齢化社会における社会保障問題に対し、具体的施策の推進を期待したいと述べた。
次に、前期主務地の寺下浩彰・和歌山県医師会長があいさつ。新型コロナの感染拡大を受けて、近医連の諸種の会議が中止、あるいはウェブ開催になったと主務の1年間を振り返り、その間に整理できた同感染症に対する考え方を、今後、各方面で示してもらいたいと期待を込めた。
その後、令和2年度の役員選任を報告。委員長には松井・京都府医師会長、副委員長に茂松茂人・大阪府医師会長および北川靖・京都府医師会副会長、常任委員に越智眞一・滋賀県医師会長と広岡孝雄・奈良県医師会長、監事に空地顕一・兵庫県医師会長ならびに寺下浩彰・和歌山県医師会長が就任した。
続いて、中川俊男・日本医師会長、西脇隆俊・京都府知事、門川大作・京都市長が来賓としてビデオレターによりあいさつ。中川・日医会長は、まず各地域での新型コロナ対策の取り組みに対して謝意を述べた、その上で、疲弊した医療機関に対し、第2次補正予算の新型コロナ感染症対策にかかる支援金に加え、今後も同補正予算の予備費活用も含めた支援が必要とし、スピード感を持って対応していくと力を込めた。なお、受診抑制防止には、日医が勧めている「感染防止対策実施医療機関『みんなで安心マーク』」の更なる利用を求めた。また、PCR検査が進んでいない現状に、「医師が、PCR検査および抗原検査が必要であると認めた場合は確実に実施できる体制」を求める緊急提言を、8月5日に公表し、政府与党に対しても財源確保の上で実現を訴えていると説示。更に薬価調査・改定、オンライン診療に関しても、中医協や厚労省の諸会議において問題提起しており、近医連にもその取り組みに対する支援を要請した。
その後は、松井委員長が議長を務めて進行。和歌山県医師会による前年度活動報告の後、元年度歳入歳出決算、2年度事業計画および歳入歳出予算を審議。いずれも拍手多数で承認された。加えて、新型コロナに対応できる医療提供体制確立のための支援など3項目を求める決議が採択された。
最後に、次期主務地医師会長として茂松・府医会長があいさつ。次期は、3年9月5日にリーガロイヤルホテル大阪にて開催予定で、新型コロナが収束し一堂に会しての開催を祈念した。また新型コロナは指定感染症であり、保健所や行政の関わりが重要で、今後、行政検査などの契約には医療機関への補償は必須であると強調。近医連として一致団結した行動が重要と締めくくった。
川村孝・京都大学名誉教授が「新型コロナウイルス感染症・その本質と対策」と題し講演した。新型コロナの流行状況は平成21年の新型インフルエンザに類似するとし、その感染環境、免疫機序、対応策などを説明。同感染症は、▽今後も1年中存在し冬に勢いを増す▽特別でなく感冒やインフルエンザと一緒に予防▽通年で持続可能な対策を行い淡々と対処――など考えをまとめた。
続いて、大林尚・日本経済新聞社上級論説委員が「ウィズ・コロナの時代と医療の未来」として講演。新型コロナに翻弄される今年度の政府予算の歳出は160兆円規模となり財政再建へのゴールが見えない状況を危惧した。また日本の長寿化は著しく、医療にも影響し後期高齢者の窓口負担の動向も注目されると述べた。更にデジタル化の遅れに触れ、新型コロナにかかる給付金など危機下での政策の手段には、「マイナンバー」は社会権の確立には必須との考えを示した。
新型コロナウイルス感染症は、我が国の医療提供体制に様々な課題を突きつけた。さらなる感染拡大を止めるためには、PCR等諸検査と保健所による積極的疫学調査を充実させ、また、重症者を治療するための病床を確保しなければならない。そして、それらを効果的に機能させるためには人員、物資の充足が必要である。
今後も繰り返し起こるであろう新興感染症は国民の生命や社会生活の質に多大な影響を与えるものである。感染拡大時はもちろん、平時における医療提供体制についても、地域医療構想を含めて再検討の必要性が明らかになった。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大においては、患者が受診を控えたことに加えて、感染を予防するための経費が膨らみ、多くの医療機関はかつてない経営難に陥っている。増大する医療需要に対して、安定した地域医療提供体制を強化・維持していくためには適切な支援を行う必要がある。
医療は対面診療が原則である。感染拡大予防策として保険適用された初診からのオンライン診療は、あくまで時限的特例措置であり、医療の本質とは相容れないものである。
これらを踏まえて、以下の事項を強く要求する。