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新専門医制度の現状

府医ニュース

2020年4月29日 第2926号

専攻医のシーリングについて

 我が国の専門医制度は、長く各専門領域の学会が自律的に独自の方針で専門医制度を設け、運用されてきた。しかし、独自に専門医制度を運用する学会が乱立して認定基準が統一されていないために、専門医の質についての懸念があり、また専門医として有すべき能力について医師と国民との間に捉え方のギャップがあるなど、国民にとって分かりにくいとの指摘から、新たな専門医制度の構築が必要とされた。
 2013年の「専門医の在り方に関する検討会」において、新たな専門医制度については、中立的な第三者機関(日本専門医機構)を設立し、専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行うこととされた。それを受け、臨床における専門的な診療能力を養成することを目的とした新専門医制度が18年よりスタートした。また、地域偏在と診療科偏在についても制度内で配慮されるべきとされ、専攻医の採用数に上限が設けられ、同年度の医師法改正において、日本専門医機構や学会に対して厚生労働大臣から意見・要請を行える規定が盛り込まれた。
 18年度の新制度1年目には、5大都市(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)について、各診療科(外科、産婦人科、病理、臨床検査および総合診療科以外)のシーリング数として過去5年間の採用数の平均が設定された。19年度(2年目)は、引き続き5都府県に初年度と同様のシーリングが実施されたが、初年度に専攻医が東京都に集中したことを受け、東京都のシーリング数を5%削減した。20年度(3年目)専攻医募集に向けては、厚労省が18年度に発表した都道府県別診療科必要医師数および養成数を基に、各都道府県別診療科の必要医師数に達している診療科に対して、一定のシーリングをかけることを日本専門医機構が決定し、10月15日より専攻医の募集が開始された。
 過去の2年においては、過去5年間の採用数の平均を用い、5大都市のみにシーリングの設定を行ったが、20年度においては、必要医師数および必要養成数を基に根拠ある新しいシーリングの考え方の導入を厚労省が提案し、日本専門医機構が、16年医師数が16年の必要医師数および24年の必要医師数と同数あるいは上回る都道府県別診療科をシーリングの対象とし、例外として、外科・産婦人科・病理・臨床検査・救急・総合診療科の6診療科は対象外とする案をまとめた。
 21年度(4年目)は日本専門医機構がシーリングを検討するための協議体を設置しており、各学会や都道府県からのヒアリング等を踏まえて検討がなされる予定である。新専門医制度は、紆余曲折を経て発足時には否定された偏在是正策の一手段としての要素を帯びてきている。