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時事

健康寿命の算出方法と評価、延伸目標

府医ニュース

2019年5月15日 第2892号

厚労省あり方研究会報告書から

 3月28日、厚生労働省「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」報告書が公表された。
 現在、健康寿命は、サリバン法(毎年必ず10万人が誕生する状況を仮定し、そこに年齢別の死亡率と、年齢別の「健康・不健康」の割合を与えて求める)による、主に3種類が使われている。
 ①「日常生活に制限のない期間の平均」は〝3年ごと〟に実施される国民生活基礎調査(大規模調査)の健康票における【あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか】という質問に対する「ない」との回答を「健康」、「ある」を「不健康」と定義。
 ②「自分が健康であると自覚している期間の平均」 は、同調査の【あなたの現在の健康状態はいかがですか】に対する「よい/まあよい/ふつう」を「健康」、「あまりよくない/よくない」を「不健康」と定義。
 ③「日常生活動作が自立している期間の平均」は、介護レセプト等データから「要介護2以上」を「不健康」、それ以外を「健康」と定義して算出される。
 「健康日本21(第二次)」では、①を主指標、②を副指標と位置付けている。サンプルサイズの関係から、都道府県・20大都市単位の数値までしか算定できないため、市町村レベルでは、③が用いられている。
 今回の報告書では、現行の①②は、健康の3要素(身体・精神・社会)を包括的に内包しているゆえ、今後も健康寿命として取り扱うこととし、③は毎年・地域ごとの算定のための、補完的指標としての活用を提案している。
 ①②については、▽30年程度遡って算出可能▽欧米主要国でも類似の測定方法が採用され国際標準にも適っている▽とはいえ完全に同一の指標ではないため、国際比較は不可能、更に①は、▼平均寿命と約10年の差があり、差(不健康期間)の短縮の指標としても適切▼先行研究の結果、活動制限は自己申告であっても信頼性や妥当性に問題ない、②は主観的な概念であるが、自覚的健康も健康を捉える上で重要な要素――と評価している。
 一方、①②では、社会福祉施設入所者や長期入院者が調査対象から除外されること(これらの人を不健康とすると、健康寿命が0.4~0.5年短縮するとの推計)、③では各地での要介護認定の申請率や認定率に影響されることに留意が必要としている。
 ③が主指標たり得ない理由として、主に65歳以上を対象とし、介護の手間が基準であることから、健康という広い概念を表す指標としては不十分と述べている。また、平均寿命との差が1~2年程度と短く、不健康期間の短縮の指標として使いづらいこと、カットオフ値を要支援1以上とすることも提唱されているが、その場合は、制度変更や市町村の施策、地域資源等の影響を受けやすいため、参考値として扱うことが望ましいとしている。信頼に足る算出のため、総人口13万人未満の自治体では3年間分の死亡情報を用い、同4.7万人未満では二次医療圏単位等で算出を行うなどの対策を勧めている。
 2016年から2040年までの健康寿命の延伸目標には、平均寿命延伸の推計(男:2.29年、女:2.50年)を加味して、「3年以上延伸」(男:75.14年、女:77.79 年以上)を掲げた。達成のためには、男性は2016年の「不健康割合」の0.84倍、女性では0.88倍になる必要があるとして、チャレンジングな設定と言及している。
 今後は、今夏を目途に「健康寿命延伸プラン (仮称)」が策定される計画となっている。
(学)