TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だより No.55

府医ニュース

2019年5月1日 第2891号

人生の最終段階における医療に関する府民アンケート⑤
――積極的安楽死を緩和医療と混同か
  鈴木 隆一郎

 前回(本紙第2888号)報告した内容は、府民の半数超が「積極的安楽死」に賛成という、驚くような結果でした。日本医師会が「医師は積極的安楽死に加担すべきでない」としていることは、既にご承知のとおりです。府民が本当にこのような事情を承知の上で回答されたのか、今一度考えてみたいと思います。
 この質問の全文は「積極的安楽死(苦痛から逃れさせるため意図的・積極的に死を招く措置を取ること)について、どう思いますか」でした。この「苦痛から逃れさせるため」の部分が、緩和医療と重なるイメージを与えた可能性が考えられます。当調査の中に「仮にあなたご自身が末期がんになった場合、抗がん剤投与などの治療は行わず、痛み止めなどの対症療法だけを行ってほしいと思いますか」との質問があり、緩和医療の受容を尋ねたとも考えられます。結果は、「とてもそう思う」33.9%、「ややそう思う」31.7%、「あまりそう思わない」10.3%、「まったくそう思わない」3.7%、「わからない」20.5%でした。図のように、緩和医療を受け容れる意向の強い人々ほど、積極的安楽死に賛成される割合が大きく、積極的安楽死を緩和医療の延長上にあるように捉えた可能性が認められます。
 医師会が人生の最終段階を含めた医療提供体制の構築を推進するには、一般の人々に対する啓発活動を一層丁寧に行う必要性があると考える次第です。