
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
府医ニュース
2019年4月17日 第2889号
平成30年度第6回医療問題研究委員会が3月13日午後、大阪府医師会館で開催された。今期委員会の前半は、会長および副会長による講演を順次実施。この日は加納康至副会長が「医の倫理」をテーマに登壇した。
加納副会長は、「医師は人間の生命に関わる職業であり、とりわけ高い倫理観が求められる」と前置き。今回は日常診療で遭遇する身近な問題を取り上げ、意見交換をしながら理解を深めたいと述べた。
まず、日本内科学会「医療倫理のポイント」から、医療の倫理問題を提示。医療現場では、知識・技術や経験で対処しきれない葛藤や疑念があるとした。また、医学や科学のように実存することを発見するものではなく、議論を通じて倫理的な正しさが導かれることなどを説いた。その上で、西洋医学の倫理に多大な影響を与えた「ヒポクラテスの誓い」を紐解き、現代的な改定・系統化を意図したものが1948年の世界医師会「ジュネーブ宣言」であると指摘。また、法と倫理の関係に触れ、法律規範として医師法に定められた行政処分の流れを概説した。
続いて、日本医師会における「医の倫理」の向上に係る取り組みを紹介。「医の倫理綱領」を基に、具体的な事例の検討を盛り込み、「医師の職業倫理指針」を策定し、現在、第3版が発行されているとした。あわせて、日医では倫理審査委員会を設立し、研究者を支援していると付け加えた。
その後、日医が発行する「医の倫理について考える――現場で役立つケーススタディ」から、臨床での適切な倫理の在り方を検討。応召義務に関しては、「専門外の診療」「患者による暴言・暴力」、説明義務やインフォームド・コンセントでは、「高齢患者への病名告知」「患者と家族の希望の相違」、また、虐待に関する通報など、幅広い内容で討議を行った。更に、加納副会長よりACP(アドバンス・ケア・プランニング/人生会議)の話題提供がなされた。
委員からは、人工透析を中止した患者が死亡した事案に関する見解が求められた。茂松茂人会長は、人工透析の中止は死に直結するとして、慎重な対応を要すると言及。結びにあたり、医療を取り巻く状況は厳しいが、患者が尊厳ある人生を送ることができるよう、医師として倫理観の涵養に努めなければならないとまとめた。