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時事

在宅医療は育つか

府医ニュース

2018年9月5日 第2867号

医師会の取り組みに期待

 厚生労働省の様々な施策にもかかわらず、在宅療養支援診療所・病院のない市町村が452もあり、在宅医療に取り組む医療機関が期待通りに増えていない。10万人あたりの施設数が全国で最も多い大阪府でも訪問診療を実施する医療機関の増加が必要であり、全国的に不足している。人口の高齢化により病院の入院需要が急増し、看取りにも支障を来すことが憂慮されているが、入院医療の受け皿となり得る高レベルの在宅医療の未整備が問題である。今回の診療報酬改定において、1人の患者に複数医療機関の専門の異なる医師が訪問診療を提供することが可能となり、在宅医療のレベル向上のみならず、在宅医療に取り組む医師の看取りを含めた負担軽減につながることにより、良質な在宅医療が普及することが期待される。地区医師会は、この機会に会員によるチーム医療体制構築に向けて努力をすべきである。在宅医療や保険制度についての研修会は言うに及ばず、将来の医療需要を含めた情報提供により、会員の在宅医療への取り組みを推進する必要がある。
 外来の受療率のピークは75歳~80歳で、団塊の世代が80歳を超えるのは2030年であり、そこから外来件数は水が引くように減ると考えられる。人口減少に加えて、対人口の受療率そのものが減り、外来の診療報酬は減少していくので、今から準備しなければ、外来が減り始めてからでは間に合わない。この点を含めて、医師会は会員に情報提供を行い、在宅医療への取り組みを指導しなければならない。
 会員の負担軽減のためには先述のチーム医療に加えて、病診連携を含む多職種連携システムの構築も医師会の役割であり、大阪府においては、大阪府医師会主導で育成した在宅医療推進コーディネータの活躍が期待される。
 一方、在宅医療を専門としない医師会員が在宅医療に取り組むことに躊躇する一因として、診療報酬の分かりにくさがある。在宅医療では一部の不適切な請求を是正する目的で制限を加えたことにより複雑化した経緯があり、審査支払機関においても十分な対応ができているとは言い難い現状もある。これに対しては医師会が在宅の診療報酬に関する講習会等を開催して、会員医療機関の不安を払拭するとともに、在宅医療の現場を熟知した審査委員を審査支払機関に推薦することにより、公明正大で、現場の実情に即した審査が行われるようにすることが必要である。審査支払機関が良質な在宅医療の発展を阻害することのないように医師会は考慮すべきである。(中)