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医師・医療関係者のみなさまへ

かかりつけ医認知症対応力向上研修

府医ニュース

2018年9月5日 第2867号

 平成30年度かかりつけ医認知症対応力向上研修(大阪府医師会・大阪府・大阪市主催)が7月28日午後、府医会館で開催され、約270人が出席した。この研修は会員を対象に認知症診療の知識・技術などの習得を目的に実施。「日本医師会かかりつけ医機能研修制度」の応用研修にも位置付けられている。

認知症の人にやさしい地域へ

 司会進行は府医介護・高齢者福祉委員会の黒田研二氏が務めた。開会に際し中尾正俊副会長は、かかりつけ医機能を発揮し、早い段階で認知症の人を適切な医療、介護につなげてほしいと期待を寄せた。また、府医でも、「認知症にやさしい地域づくり」とともに、地域包括ケアシステムの構築に尽力すると述べ、理解と協力を求めた。
 はじめに中西亜紀氏(大阪市立弘済院附属病院副院長・認知症疾患医療センター長)が、「診断・治療編」をテーマに講演を行った。認知症とは、「一度発達した知的能力が、後天的な脳の器質性変化により慢性進行性に低下し、社会生活に支障を来した状態」と述べ、検査・診断と治療を詳しく解説。認知機能の低下を誘発しやすい薬剤、診療で注意すべき身体疾患を示したほか、画像診断では、「他の疾患で認知症の症状が引き起こされていないか(除外診断)」などを目的に行うとした。また、具体的な事例から、「アルツハイマー病」「レビー小体型認知症」「前頭側頭葉変性症」「血管性認知症」の特徴や治療、薬剤の使用にかかる注意点などに言及。更に、行動・心理症状(BPSD)の対応や、軽度認知障害(MCI)の診断、若年性認知症についても説明した。あわせて、「認知症疾患診療ガイドライン2017」の内容を紹介。本人・家族を支えるための諸制度と社会資源のほか、アルツハイマー型認知症以外の認知症である「嗜銀顆粒性認知症」なども盛り込まれたと述べた。
 その後、同委員会委員より前防昭男氏、辻正純氏が登壇した。前防氏は、「かかりつけ医の役割編」を担当。「早期の段階での発見・気付き」「認知症に対する相談等への適切な対応」「日常的な身体疾患への対応、健康管理」「家族の精神的支え」のほか、専門医との医療連携や多職種協働を挙げた。また、介護認定において主治医意見書は重要な資料であると強調し、認知症の症例を具体的に記載するよう呼びかけた。「連携編」では、辻氏が「地域全体で支える必要性」を強調。本人や家族の支援体制では、医療・介護に加え、地域での見守りなども求められるとした。特に多職種協働では、職種によって得手・不得手な部分があることを理解した上で行動することが重要と指摘。かかりつけ医を中心とする継続的な医療は、地域の高齢者にとって必須とまとめ、患者・家族に寄り添うことが地域の安心にもつながると述べた。
 最後に多田和代氏(大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課認知症施策担当課長)が「制度編」を解説。認知症高齢者施策や具体的な取り組みなどを説明したほか「大阪市認知症初期集中支援事業」の実績を報告した。