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時事
府医ニュース
2018年8月15日 第2865号
7月13日、消防庁「救急業務のあり方に関する検討会」平成30年度第1回の会合が開催された。示された6項目の検討事項のうち「傷病者の意思に沿った救急現場における心肺蘇生の実施」については、既に2回の検討部会(WG)が行われている。▽救急隊員の17%が、書面によって心肺蘇生を希望しない意思を示した心肺停止事例を経験▽各消防本部においてDNAR(do not attempt resuscitation)を表明している傷病者への救急隊の対応が異なっている▽約8割の都道府県および地域メディカルコントロール(以下、MC)協議会が、DNARプロトコルを策定していない――などの過去の調査結果が示された。現在、全国の728消防本部、および都道府県や地域のMC協議会を対象に実態調査を実施中である。
29年4月に日本臨床救急医学会から公表された「人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言」では、傷病者が心肺蘇生等を希望していない旨を現場で伝えられた場合の、救急隊の対処に関する基本的な対応手順をフローチャートに示している。まずは心肺蘇生を開始するが、かかりつけ医等に連絡し、具体的指示を直接確認できれば、その指示に基づいて心肺蘇生等を中止する。心肺蘇生を希望していない場合は119番通報をしないのが望ましいとしつつも、救命のためには一刻も早い通報が必要であり、心肺蘇生等を望むか否かを確認してからでは遅いため、通報の後で心肺蘇生等を望まないことが明らかになる事例の発生はやむを得ないと付記している。
この提言を踏まえ、埼玉西部消防局では、18年から実施してきた「救急隊員が行う救急救命処置に関する要望書」による運用を改め、29年12月から「DNARプロトコール」を運用していると報告された。DNARの申し出は、30年5月末までの6カ月間で11件あり、うち4件が処置を中止して搬送、2件が不搬送となっており、処置の中止が過半数(54.5%)を占めた。この割合は、旧手順による29年1月~11月末では39.1%、25~28年の4年間では、39.6%となっている。
一方、大阪市消防局からは、27年2月に発出した「DNARを告げられた場合の救急活動について」において"家族や関係者に消防法に基づく救急活動を遂行しなければならない旨を十分に説明の上、必要な応急処置を継続して医療機関に搬送すること"としているが、増えてきているDNAR事案に対してどう対応するのか、ICや書面のことをどこまで現場で聴取するのか、救急隊員の悩みがあると報告された。
現在では、終末期の治療差し控えに対し、一定の手続きを踏めば刑事責任は問われないといえる時代になっている(日本医師会第XV次生命倫理懇談会答申)。人生の最終段階に向けて、かかりつけ医には、意思決定支援(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)とともに、その意思が完遂されるための支援も求められている。(学)