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勤務医の窓
府医ニュース
2018年8月15日 第2865号
今年度の診療報酬改定では、200床以上の病院でのかかりつけ医機能の縮小が方向付けられている。データ収集目的もあり、年余にわたって特定健診項目を含む患者管理を行ってきた。実際、これは患者には好評であった。例えば呼吸器や循環器疾患がない患者でも、2~3年に一度、胸部レントゲン撮影や心電図測定のほか、検尿では尿蛋白以外に尿潜血にも気を配り、肺がんや膀胱がん、そして慢性呼吸器疾患なども診断してきた。こういうことは、ICT利用の診療支援ツールを使えば簡単にできることが分かった。また、糖尿病連携手帳をはじめ、患者情報の公開を大規模に行い、患者ばかりでなく、地域における薬局や介護施設に至るまで情報を浸透させる方法としては有効であった。同時に、受診患者の急変にも待たずに対応できるように、外来機能を強化したことも相まって、積極的に逆紹介をしながらも患者数は増加してきた。
問題がないわけではない。他科共観があるのに、ちょっと熱が出たとか腹痛とか、果ては医療相談など、専門とは直接関係ない疾患でも、我々の科を真っ先に受診する患者が多くなってきたのである。なぜ当科がやらないといけないのか疑問がある症状も多々あったが、予防科の特徴として、これらの患者サービスのノウハウを十分蓄積したと思う。しかし、肥大化した外来は、診療報酬改定とともに人材供給が滞り、そこに医師1人の欠員で瞬く間に自転車操業になった。医師、看護師とも各1人減少した瞬間に、今まで登ってきた崖の高さに初めて気付いたのである。しかし、日常業務が支障なく運営できているのは、病院スタッフの協力があるからこそである。よく考えてみると、ただでさえ患者集中のある中核病院で、ICTを駆使した外来サービスや、待ち時間なし対応を充実すれば、フリーアクセスの世の中、いくら逆紹介をがんばっても患者集中には必然性があった。
弁解ではあるが、この数年、ICTの方法論に気を取られていたことが、外来肥大化を招いた原因であったと思う。今まで主張してきた、中核病院を地域の情報センターとする考え方は、厚生労働省のかかりつけ医機能移転政策と真っ向からぶつかった。私の境遇を考えると選択枝はひとつしかない。管理の方法論は既に実用段階に達していたため、今後の地域への技術展開を探ることが地域医療の向上に貢献すると思う。今年13年目を迎えた「河内長野の応戦」の完結編の始まりである。
府医勤務医部会
副部会長 幸原 晴彦――1278