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時事
府医ニュース
2018年8月1日 第2864号
受動喫煙対策を強化する改正健康増進法は7月18日の参議院本会議で可決、成立した。改正の趣旨は、望まない受動喫煙の防止を図るため、多数の者が利用する施設等の区分に応じ、当該施設等の一定の場所を除き喫煙を禁止するとともに、当該施設等の管理について権限を有する者が講ずべき措置等について定める。【基本的な考え方第1】は、受動喫煙が他人に与える健康影響と、喫煙者が一定程度いる現状を踏まえ、屋内において、受動喫煙にさらされることを望まない者がそのような状況に置かれることのないようにすることを基本に、「望まない受動喫煙」をなくす。【基本的な考え方第2】は、子どもなど20歳未満の者、患者等は受動喫煙による健康影響が大きいことを考慮し、こうした方々が主たる利用者となる施設や、屋外について、受動喫煙対策を一層徹底する。【基本的な考え方第3】は、施設の類型・場所ごとに、主たる利用者の違いや、受動喫煙が他人に与える健康影響の程度に応じ、禁煙措置や喫煙場所の特定を行うとともに、掲示の義務付けなどの対策を講ずる。
学校・病院・児童福祉施設等、行政機関は敷地内禁煙とし、それ以外の多数の者が利用する施設(事務所や飲食店)は原則として屋内禁煙とするなど受動喫煙対策は一歩前進した。同法は東京オリンピック・パラリンピック直前の2020年4月に全面施行される。しかし、事務所は煙が室外に流出しない専用の喫煙室を設ければ、喫煙を認める。個人や中小企業が経営する既存の飲食店で客席面積が100平方㍍以下の店は「喫煙可能」などの標識を掲げれば、店内でたばこを吸うことができる。こうした例外規定のため、全国の飲食店のうち同法による規制の対象となるのは約45%にとどまることは大問題である。また、学校・医療機関・行政機関に屋外の喫煙場所の設置を可としたことも問題視されるべきである。
一方、先月成立した東京都の受動喫煙防止条例では、従業員を雇っている飲食店は規模にかかわらず屋内を原則禁煙とし、たばこを吸える喫煙専用室の設置費の9割(上限300万円)を補助する。同条例によって都内の飲食店の84%が規制され、国の規制対象を大きく上回る。また、小中高等学校・保育所・幼稚園においても都は敷地内を禁煙にするとともに、屋外の喫煙場所の設置も禁止することで、子どもの受動喫煙機会を減らした。
国よりも厳しい規制を導入しようという動きは都にとどまらず、千葉市や大阪府も国の基準を上回る条例策定へ検討を始めており、松井一郎知事も平成31年2月の府議会に受動喫煙防止条例案を提出する方針であり、期待したい。
世界保健機関(WHO)は、公共の場所での受動喫煙を防ぐ各国の取り組みを調査し、4段階に分けて評価している。日本はこれまで最低の評価となっており、今回の法律が施行されてもWHOの4段階の基準では下から2番目にとどまるだけであり、更なる見直しの議論が必要である。 (中)