
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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ミミズクの小窓
府医ニュース
2018年7月25日 第2863号
"血液型占い"なるものがある。日本をはじめとするアジアでけっこう信じられているが、欧米では「非科学的かつハラスメントの温床」と批判されている。ミミズクも同意するが、かつて大統領とファーストレディが占星術にのめりこんでいた某国には言われたくないと思う次第である。
性格はともかく、ABO血液型とある種の疾患や病態との関連はほぼ間違いなく存在する。それらは多くの場合、"O型vs非O型"で比較される。すなわちO型は非O型に比べて膵がんや胃がんのリスクが低く(Cancer Epidemiol 39:150,2015)、マラリアには強いがコレラには弱い(Medical Genetics Summaries 2012)。また出血性疾患の頻度は高いが、血栓塞栓症は生じにくい(Semin Thromb Hemost 38:535,2012;39:72,2013)。そして最近、東京医科歯科大学のグループが重症外傷患者の死亡率と血液型の関係について新知見を報告した(Critical Care 22:100,2018)。
この研究は外傷患者で総合外傷重症度(ISS)が15より大きかった(すなわち入院適応)901例を対象としている。注目すべきは入院全死亡率で、非O型では11%であったのに対し、O型では28%と明らかに高かった。多変量解析モデルでもオッズは2.86となった。この結果には出血性合併症が関連していると考えられた(ただし輸血量では有意差はない)。O型と易出血性については、O型は非O型に比べてvon Willebrand factor (vWF)が25~30%低いと報告されていて、これが出血しやすく、血栓ができにくいことの一因とされている(Semin Thromb Hemost 40:49,2014)。
さてこの研究をどう生かすか、である。やはりO型の方は、外傷に対し今まで以上に用心されるにこしたことはなかろう。どの程度注意すれば良いかについては、vWFの値から考えて、非O型の方より30~40%ほど余計に注意すれば良い、という計算になる。「いい加減なことを書いて字数を合わせているだろう?!」とおっしゃる方、図星である。
不肖ミミズク、ABO血液型と疾患の関連についての多くの文献に目を通すうちに天啓のごとくひらめいたことがある。それは集積された結果をデータベース化して、「科学的根拠に基づく血液型占い」を創設することである。「ミミズク大明神」と銘打って"おみくじ"として販売するのはどうだろうか。例えば、「O型、中吉、血の流れ淀みなしも怪我すれば危うし」という具合に……。「馬鹿なことを考えずに仕事しろ!」というご批判は真摯に受け止めたい。