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時事
府医ニュース
2018年7月4日 第2861号
6月19日、総務省から「介護施策に関する行政評価・監視――高齢者を介護する家族介護者の負担軽減対策を中心として」結果報告書が公表され、勧告が厚生労働省に対して行われた。
家族の介護・看護を理由とした介護離職が年間10万人を超え、高齢者と現役世代の共倒れがあるとして、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月閣議決定)では「介護離職ゼロ」の目標が掲げられている。今回の行政評価・監視は、これを踏まえ、家族介護者の負担軽減の観点から、仕事と介護の両立を図るための取り組み状況を調査し、関係行政の改善に資することを目的としており、家族介護者・ケアマネジャーを対象とした意識調査や行政の取り組みに関する実地調査を行っている。
調査結果と勧告は、以下の4項目からなる。
1.介護保険サービス整備の的確な推進:特別養護老人ホーム、在宅サービスの夜間対応や一時引き受けに不足を感じるケアマネジャーが多い。介護保険事業(支援)計画で利用見込み量が未設定であったり、実績とかい離する状況がある=自治体に対し、各年度の計画達成状況の点検・評価について適切に実施するよう助言。
2.介護人材の確保の着実な推進:人材不足により必要な介護保険サービスの提供に支障が発生=都道府県に対し、効果的な目標の設定や点検・ 評価の方法等を情報提供。
3.介護休業制度等の周知促進:制度の認知度が低い(家族介護者への調査で、介護休業を利用したことがないとする者が95.7%、うち制度自体を知らないとする者が63.4%)。事業所に28年度改正内容(3回を限度として分割取得可能等)が十分に伝わっていない。労働局における地域包括支援センターや関係機関への周知の働きかけが十分でない=労働局による関係方面への周知要請を的確に実施。
4.家族介護者の求職・就職実態の把握・分析:家族介護者の再就職が容易でない(介護離職時に就職活動を行った者のうち、再就職できていない者が56.3%、正規職員での再就職は20.6%で、離職時に正規職員であった割合49.5%の半分以下)。家族介護者に重点を置いた就職支援は未実施=ハローワークシステム機能の活用により、家族介護者の求職および就職の実態を的確に把握・分析し、就職支援の在り方を検討。
介護離職による共倒れは、日本という国が倒れることでもある。何としても防がなければならないが、人口減少と高齢化率の更なる上昇が同時に進行する中では、容易なことではない。
折しも、同じ6月19日に閣議決定された30年版高齢社会白書では、「先端技術等で拓く高齢社会の健康」が特集され、AIを用いたセラピーロボットとともに、介護をする際に介護ロボットを利用したい人は59.8%、介護を受ける際に介護ロボットを利用してほしい人は65.1%という、国内の成人を対象とした内閣府の調査結果が紹介されている。
やはり期待は、こちらの方向になってしまうのか――。(学)