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時事
府医ニュース
2018年6月27日 第2860号
造血器悪性腫瘍を含む血液疾患は専門医が少ないばかりでなく、専門医が在籍する病院も限られており、患者は遠方への通院を余儀なくされることが多い。近年、血液疾患の治療成績の向上に伴い、長期生存が可能となった。患者の高齢化が進み、遠方への通院が困難となる上、在宅医療を要する患者が増加している。一方、血液疾患は専門性を必要とすることから、一般内科医等が診療を希望しないことが多く、患者は主治医を探し回る事態となる。
平成30年度の診療報酬改定により、在宅患者訪問診療料を1人の患者に対して1保険医療機関しか算定できない取り扱いが見直された。すなわち、在宅時医学総合管理料(在総管)、施設入居時等医学総合管理料(施設総管)または在宅がん医療総合診療料の算定要件を満たす他の医療機関の依頼により、診療を求められた傷病に対して訪問診療を行った場合、求めがあった日を含む6カ月を限度に、「在宅患者訪問診療料(Ⅰ)―2=830点等」を月1回算定できることとなった(6カ月を超えて算定できる場合有り)。この改定により、数少ない血液専門医が在宅主治医と協力して診療することが可能となった。血液専門医の対応可能な患者数の増加と、対応可能な診療範囲の拡大が期待できる。
血液疾患の場合には輸血が必要となることがある。血液学的検査によって輸血が必要となった場合に、血液製剤を準備し、血液交叉試験等を行ってから輸血を実施するために、医療機関内での待ち時間が長くなる。医療機関によっては外来輸血ではなく入院輸血で対応しており、輸血のためだけに入院医療が実施され、患者に時間的、経済的負担を強いている。これに対して、一部の血液専門医が診療所での外来輸血や在宅輸血を行っているが、診療報酬上の制限により、一般的とはなっていない。すなわち、血液製剤のストックが困難なため、必要時に赤十字血液センターに発注して血液製剤を受け取り、その後、血液交叉試験等を臨床検査センターに依頼するので時間を要する。
患者は自宅で待機することができるが、その間の病状の急変による他院への緊急入院や死亡あるいは血液交叉試験等の結果により、受け入れた血液製剤を投与できなくなった場合には、医療機関が血液製剤のみならず処分の費用も負担しなければならない。この問題点を改善しなければ在宅輸血のみならず外来輸血も普及しないと思われる。また、輸血では様々な副反応が起こり、重大な結果を引き起こす場合もあるので、輸血開始から終了後しばらくの間、副作用監視と救急対応のため患者を見守る必要がある。医師が輸血中長時間付き添うことは困難であるため、看護師に依頼することが多いが、熟練した輸血実施医療機関の看護師を付き添わせても在宅患者訪問看護・指導料を在宅患者訪問診療料と同日には併算定できない。輸血に限って併算定を認めるとともに、時間に見合った長時間訪問看護・指導加算を設定する必要がある。
近年、血液学会総会等においても、在宅医療に関する講演がみられるが、数少ない血液専門医の努力をバックアップする診療報酬改定が望まれる。(中)