TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

人生の最終段階における医療に関する意識調査

府医ニュース

2018年6月20日 第2859号

患者の意思決定支援プロセス(ACP)から考える

 厚生労働省は、おおむね5年おきに「人生の最終段階における医療」への意識やその変化を把握するための調査を行っている。平成4年から開始し、政策検討の資料として広く活用してきた。本年3月に第6回となる調査結果が報告された。調査は、29年12月5日から12月29日の期間に一般国民、医師、看護職員、介護職員、各施設長を対象に実施された。
 本稿では、医師に関する調査結果を中心に概要を示す。対象は、無作為に抽出された病院医師3千人、診療所医師1500人で回収率は23.1%。人生の最終段階における医療・療養について考えたことがある割合は88.6%で、一般国民(59.3%)より高い。家族等、周囲と話し合うきっかけは、家族等の病気や死、自分の病気が多く見られた。自分が意思決定できなくなった時に備えての「事前指示書」に関しては、77.1%が賛成、反対1.7%で、他の対象者も同様であった。しかし、実際に作成しているのは6%に過ぎず、事前指示書に従った治療を行うことを法律で定めることには、消極的な意見が多かった。
 末期がんと診断された場合、医療・療養を希望する場所は自宅が66.5%であり、最期を迎えたい場所も69.4%が自宅を希望した。一方で、医療機関・介護施設を希望した理由では、「家族等に負担がかかる」「介護してくれる家族等がいない」が多かった。しかし、認知症状態となった場合は、多くが介護施設での医療・療養を希望し、最期も介護施設で迎えたいとの回答が多数であった。その理由では、やはり「家族等への負担」が圧倒的に多かった。
 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の認知度は、医師が22.4%、一般国民3.3%と低かったが、認知している人の多くは利用に賛成で、実際に実践している医師は27.3%であった。また、ACPを「施設として」実践しているのは病院で23.9%、特養38.7%、老健32.4%であった。そのほか「患者・家族等で十分に話し合いを行っている」との回答は、病院で32.3%、特養51.5%、老健48.0%。「事前指示書を施設の方針として用いている」は病院20.9%、特養49.0%、老健35.7%と、介護施設でACPの利用が進んでいた。
 現在、人生の最終段階の医療に関する様々なガイドラインが出されているが、厚労省(28.6%)、日本医師会(20.0%)を利用する割合が高かった。人生の最終段階の定義や、延命治療の不開始、中止等を行う判断基準については、詳細な基準を示すのではなく、大まかな基準を作り、それに沿った詳細な方針は、医師または医療・ケアチームが患者・家族等と検討して決定するとの考えが多かった。
 多死社会を迎え、現在、終末期医療・介護の在り方が議論されている。日医は、かかりつけ医の終末期医療に対する意識向上のため、ACPに関するパンフレットを作成し、「日医雑誌」4月号に同封した。ホームページにも掲載されているので、ぜひ活用いただきたい。