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時事

循環器疾患の緩和ケア

府医ニュース

2018年5月2日 第2855号

心不全パンデミックに備えた地域チーム作り

 4月6日、厚生労働省「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ」(以下、WG)の第3回会合が開かれ、取りまとめ案が提示された。このWGは、平成28年12月の「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」における議論の整理を受けて、29年9月に設置されていた。
 26年のWHO報告によると、成人で人生の最終段階に緩和ケアを必要とする者の疾患別割合は、第1位が循環器疾患(38%)で、第2位ががん(34%)となっている。日本では、心疾患の種類別死亡者数のトップは心不全で年々増加、2位の急性心筋梗塞の約2倍を占め(37%対19%/27年)、その差は年々開いている。心不全は、すべての心疾患に共通した終末的な病態であることから、WGでは、主に心不全患者に対する緩和ケアが検討された。
 心不全とがんの相違点として、「疾患特性」では、1.疾病経過や予後予測の困難さ(心不全は寛解と増悪を繰り返し、急性増悪時では治療により改善することも多く、経過の予測が難しい)2.患者の年齢層や主に受療する医療機関(心不全患者の年齢層は高く、がん患者に比べ中小病院や診療所で受療している割合が高い)3.食事や運動等の生活習慣や自己管理が疾病に与える影響、「緩和ケア」の面では、1.疾患の治療による苦痛緩和への影響(心不全では原疾患への治療が症状緩和につながるため、最終段階においても、侵襲的な治療を含む原疾患の治療が選択肢に挙がり得る)2.適応となる薬物療法・非薬物療法の使用方法(医療用麻薬の投与量の違い、NSAIDsやステロイドの心不全への悪影響)――と整理した。このような疾患特性を踏まえた共通点・相違点の考え方は、COPDや脳卒中等の非がん患者への緩和ケアにおいても参考になるとしている。
 そして、既存の緩和ケアチームと心不全多職種チームが連携した、心不全多職種緩和ケアチームの協働を掲げ、同一医療機関内に2種類のチームがないケースでは、地域の既存の緩和ケアチームと心不全多職種チームが"病院間の連携"という形で連携し、それに地域の医療機関が更に連携する体制を想定した。
 また、▽様々な併存症を有する高齢者が多いことから、外来診療や訪問診療を核とした、地域におけるケアの提供が重要▽多職種連携においては、包括的かつ継続的な管理・指導のため、地域のかかりつけ医や看護師が中心的な役割を担う必要がある――と謳っている。
 既に、心不全高齢患者の増加は、地域でも実感されるところとなっている。今回の診療報酬改定において、緩和ケアの適応疾患が拡大され、これまでのがんとHIVに末期心不全も加わったが、すぐに現場に広まることは困難との見方もある。今後も、地域には、様々な疾患に対する連携体制の充実が求められることは確実であるが、特化したチームと未分化なネットワーク、双方のバランス良い発展が望まれる。(学)