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時の話題
府医ニュース
2018年5月2日 第2855号
厚生労働省「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」は3月30日、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を取りまとめ、公表した。今回の診療報酬改定でオンライン診療料が新設されたが、その施設基準では、「ガイドラインに沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であること」が要件として明記されていた。本指針では、「遠隔医療」とは、「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」とし、「オンライン診療」については、「『遠隔医療』のうち、医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察および診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムにより行う行為」と定義した。
つまり、オンライン診療は、情報通信機器を用いた医師―患者間(D to P)の通信による診療を対象とするものであり、「遠隔医療」は、医師―患者間(D to P)に加えて、医師―医師間(D to D)も対象として含んでいる。
ICTの活用は、医療者と患者双方の利便性が高まり、特に離島、へき地などの受診が困難な地域においての医師―患者間、医師―医師間のいずれにおいても、その有用性が期待されている。一方、ICTのみでは、診察の基本である対面診療で得られる多くの理学的所見などの情報が限定され、情報通信機器を通しての限られた所見から診断・治療を行わなければならない。また、対面での受診間隔が長くなると、当初は慢性疾患で病状が安定していても、医師の管理から外れることで治療が独り歩きする可能性があり、病状の変化、悪化に気付くことが遅れることが懸念される。更に加えると、ICTは様々な分野で活用されているが、医療情報等の機微な個人情報に対する漏洩の問題など、現状ではセキュリティーの課題が完全に払拭されているわけではない。
このように医療分野におけるICTの活用は、利便性の向上という恩恵と、医療安全の面でのリスクが表裏一体であることは言うまでもない。「情報通信機器を用いた診療」については、これまで各種の通知等が発出されていたが、定義・解釈等に関して必ずしも十分に周知されていたとは言えない。
今回、オンライン診療が保険適用されたことにより、基本的にはオンライン診療が解禁されることになったが、特に医療安全の面から施設基準、運用について様々な角度からの規定が設けられた。引き続き有用性、安全性などを十分に検証し、必要に応じてオンライン診療の在り方についての見直しが求められる。なお、ガイドラインの内容については、厚労省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000201789.pdf)を参照願いたい。