TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時事

改正道路交通法施行から1年

府医ニュース

2018年3月28日 第2851号

高齢者運転についての議論が活発化

 3月12日、改正道路交通法が施行されて丸1年を迎えた。2月26日には警察庁から、施行日から昨年末までの暫定値による「改正道路交通法の施行状況について」が公表されている。75歳以上の172万5292人が認知機能検査を受け、うち2・7%が第1分類(認知症の恐れあり)と判定された。因みに、第2分類(認知機能低下の恐れあり)は26・6%、第3分類(認知機能低下の恐れなし)は70・7%となっている。
 第1分類4万6911人のうち、自主返納と失効(更新せず)を合わせると1万3624人(29・0%)となる。最終的に免許の取り消し・停止を受けた人は1351人(2・9%)で、約9か月半の間に、28年の597人を大きく上回る数となった。
 また、29年1年間の自主返納は42万3800件で、このうち75歳以上が25万3937件となっており、24年に運転経歴証明書が本人確認書類として永年有効となって以降、年々大幅に増加している。
 先立って2月15日に発表された「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」では、▽75歳以上高齢運転者は、免許人口当たりの割合で死亡事故を起こしやすい傾向▽高齢運転者による死亡事故は、75歳未満と比較して車両単独事故、特に工作物衝突や路外逸脱事故が多い。人的要因では操作不適、特にブレーキとアクセルの踏み間違いによる割合が高い▽死亡事故を起こした高齢運転者は、全受検者と比較して、直近の認知機能検査結果が第1・2分類であった割合が高い――と分析されていた。
 3月2日には「高齢運転者交通事故防止対策に関する有識者会議」の下部組織のひとつ「認知機能と安全運転の関係に関する調査研究」分科会の初会合が開催され、これらのデータとともに、「認知症と一括りにして運転を制限するのではなく、個人が生活する場の特性を踏まえ、現実的な能力評価に根ざした判断が必要」などの学会提言を基に、認知機能の低下と運転能力に関するデータの収集・分析、および過去の検査・診断結果と違反事故状況とのクロス分析等、認知機能と安全運転の関係について調査研究を進め、認知機能に応じた今後の対策を講じるための議論が始まった。
 さて、1月に公表された「運転免許証の自主返納制度等に関する世論調査」においては、安心して運転免許証を返納できるために重要なこととして、1.公共交通機関の運賃割引・無償化2.地域の公共交通機関の整備3.買物宅配サービスの充実4.医師や看護師などによる巡回サービスの充実――と続き、上位2つは地域差はあるものの、東京都区部以外では過半数を占めていた。
 自治体による支援(大阪府では「高齢者運転免許自主返納サポート制度」)が進められているが、(場合によっては世帯全体の)移動手段を失うことに対し、おまけ的な特典ではなく、ニーズに基づいた真のサポートが求められており、市町村の本気度が問われよう。"これも地域包括ケアのまちづくりのひとつ"との号令がかかれば、少しは取り組みが加速されるだろうか。(学)