
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
本日休診
府医ニュース
2017年12月27日 第2842号
嘉永から安政の頃、九州のある地では天災による凶作で農民達は苦しんでいた。このような不況下でも医師達は患者から未払い分の請求ができずにいた。また当時は、滞在医という自分の地盤を持たぬ他所からきた医師がおり、彼らは目新しさと弁舌でもって地元の患者を奪っていった。その結果、農民だけではなく開業医も櫛の歯が抜け落ちるようにいなくなってしまった。滞在医はその地に需要がなくなるとどこかへ移っていった。
内閣府における遠隔診療を扱うワーキンググループなどが、平成9年遠隔診療通知で規定されている、対象患者と、対面診療の必要性の2点の規制緩和を求めてきた。結果、「通知の例示で示された以外の疾患でも遠隔診療が可能」「へき地・離島でなくても遠隔診療が可能」、更には「初診は必ず直接の対面診療を行わなければならないということではない」と遠隔診療に対する解釈を拡大した。加えて、「電子メール、SNS等を組み合わせた遠隔診療でも患者の心身の有用な情報が得られる場合なら可能」とし、事実上のスマホ診療解禁がなされた。
府内で主に夜に診療している医療機関がある。その中で実際に診療をしているのかはっきりしない診療所もある。ここからは私の想像でしかないのだが、今回、遠隔診療の診療報酬化がなされると、夕方5時までは病院勤務、夕方6時から遠隔診療を行うために診療所開業を行うことが可能になるのではないか。つまり、自分の勤めている病院の外来患者を、勤務先に黙って自院の遠隔診療外来に誘導し、何か急変が起これば自分が勤めている病院をバックベッド代わりに利用する。自らは病院からサラリーを貰い、一方で病院の外来患者で遠隔診療を行い副業とすることが可能だと。こんなことがもし起これば、病院と周辺開業医への影響はいかなるものだろうか。このような開業医に、地域医療の貢献が望めるだろうか。リスクなく開業できる可能性のある遠隔診療専門の診療所は、平成の滞在医になる可能性が大いにあるのだ。彼らは採算がとれなければいつでも撤退し病院へ戻ることができるのだから。(真)