TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

高齢者シェアハウス

府医ニュース

2017年9月27日 第2833号

 家族以外の人と生活住居を共同し生活をする「ルームシェア」。若者の間だけでなく、老いを見据えた世代にもちらほら見られ、私の外来にもいらっしゃる。同級生同士であったりLGBTであったり。一時的な同居と言うよりも、将来の看取り合いまで話し合い、「何かあったらこの人に看取られたい」と私に希望を述べられる。
 このルームシェアに事業者が介在するのが「シェアハウス」だ。シェアハウスは都市部の若者や外国人を中心に利用が多い。メリットとしては敷金や生活費の節約ができること。昨今のデフレにより都市部の低所得者向けビジネスとして事業者もシェアハウスを拡大していくだろう。
 さて、冒頭に挙げた、介護保険の対象ではないが、将来誰かに面倒を見てもらえるか不安なシニア層を対象に「高齢者シェアハウス」ができても不思議ではない。実は、大手不動産業者などが、ビジネスとして既に展開している。グループホームという認知症や障害者対応のサービス付きシェアハウスは存在しているが、高齢者シェアハウスには「サービス付き高齢者向け住宅」のような介護事業者の介在もない。しかし、将来そこに入所したシニアたちが介護サービスを全く利用しないとは限らない。むしろ、将来の介護保険囲い込みにつながることを懸念している。更には、介護施設のような高齢者を守る規制がないことより、認知症高齢者や社会的弱者をこれらシェアハウスと名付けられた狭い部屋に押し込め、彼らの生活保護費を巻き上げるようなビジネススキームを思いつく輩も出現するのではないか。
 入所されるシニア層は自分で将来を考え、そして事業者の多くは社会的要請を感じ起業していると思われる。一方、現在の我が国が取っている経済政策の向き(新自由主義)と今までの貧困ビジネスの事例から、人の尊厳を無視するような事件に発展してしまうような気がしてならない。これも自己責任で片付けるつもりなのだろうか。(真)