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時事

DPCと地域包括ケア

府医ニュース

2017年8月16日 第2829号

チーム医療の地域への拡充を望む

 現在、地域包括ケアに急性期病院は積極的に関与していない。しかし、急性期患者も治療が完了すれば退院し、生活習慣病対策などの対応が必要となる。この部分には専門的な知識を要する場合があり、恒常的に情報提供する体制が求められる。近年、新たな専門医の仕組みづくりが進行しているが、地域包括ケアと関連づける動きである。急に議論が始まった「医師の働き方改革」も独立した事象ではない。チーム医療で業務の組織化と分散化を計り、医師が効率よく勤務できる環境の整備も目標のひとつであり、病院全体で取り組む必要がある。医師の数倍の人数が働く看護師などコメディカルには、地域と親和性のある人材も多くいる。組織化を図ることで強力な地域医療のエンジンになることは明らかであろう。院内のチーム医療が院外でも積極的に活動できるようにするには、病院を仕切るDPCの改革が必要である。ここで難解なDPCの仕組みに関して解説する。
 DPCに参加するには、7対1または10対1入院基本料の急性期病院で、診療録管理体制加算を算定できる病院であることが必要となる。参加が認められた病院はDPCで診療報酬を算定する。DPCコードは14桁で構成され、1.疾患コード、2.病態等分類、3.年齢・出生時体重等、4.手術の有無、5.手術処置等1、6.手術処置等2、7.副傷病、8.重症度等――で記載される。これらで決定される診断群分類ごとの1日包括点数は、入院期間ごとで3段階に減額され、漫然とした診療はできない。在院日数の短縮はこの方法論でなされる。期間ごとの1日の包括点数に対して、期間内の入院日数を掛けた診療点数に医療機関別係数を掛けたものが、疾患ごと包括される点数となる。これに特定入院料加算、出来高点数や食事療養費といった定額の診療費を加え、最終的な算定となる。
 各病院は収入を上げるため、医療機関別係数をより高くしようと努力する。医療機関別係数は、申請時の施設特性である基礎係数、人員配置や施設全体として有する体制など施設特性にあった内容を整備しておかなければならない機能係数Ⅰと、努力すれば報われる機能係数Ⅱが主立った構成要因である。また基礎係数は、Ⅰ群の大学病院本院、Ⅱ群の高機能の病院、その他のⅢ群に分かれる。特に、全国に140あるⅡ群の病院は、(1)DPC病院の平均と比較し、どの程度の包括範囲出来高実績点数を稼ぎ出したかという診療密度、(2)1病床あたりの研修医数、(3)どれだけ高度な医療技術を何例実施したか、(4)平均よりも重症度の高い患者を診たかという重症患者に対する診療の実施要件――で決定され、全国に1446あるⅢ群病院の目標となる。基礎係数においては、高度かつ教育的であることが評価基準であるが、地域医療での構造性は評価されず、旧専門医制度を支援する関係になっている。機能係数Ⅰには、この基礎係数を維持する構造性を示す項目が並ぶ。例えば7対1入院基本料や医療事務作業補助体制加算などであるが、地域医療と関連するのは地域医療支援病院入院加算と離島加算である。機能係数Ⅱは、努力すれば増加する指標である。保険診療指数(どの程度保険診療に携わったか)、という効率性指数(在院日数短縮に努力したか)、複雑性指数(同じ疾患の様々な状態の患者を診たか)、救急医療指数(入院時に集中的な出来高診療を行ったか)、地域医療指数(地域で救急医療の体制が評価されているか)などで加算される。地域医療指数は、地域で何例の重症患者を診たかという数の論理が主体である。患者を数多く診ることは、その地区への医療貢献には違いない。しかし、クリニカルパスがなぜ広まらないかという答えは、地域医療係数には出ない。もちろん地域包括ケアの概念も含まれない。急性期医療の見地では完成度の高いDPCであるが、先鋭性を進歩させるだけの論理から、地域包括ケアへの関与など横への広がりを持たせることで、院内の組織化されたチーム医療を地域に拡大していくことが望まれる。(晴)