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時の話題

厚労省研究班作成の「急性期指標」

府医ニュース

2017年8月16日 第2829号

地域医療構想調整会議では慎重に

 地域医療構想が策定され、現在、各二次医療圏域において地域医療構想調整会議(以下、調整会議)が開催されている。多くの圏域では、急性期病床の削減、回復期病床への転換に向けた議論が進んでいる。そのような中、厚生労働省は5月10日に開催された「第4回地域医療構想に関するワーキンググループ」(以下、ワーキング)において、急性期から回復期への病床転換を検討する際に急性期医療の度合いを病院ごとに示す「急性期指標」を調整会議等で活用するように提案した。
 これは、病床機能報告制度での項目の中から高度急性期・急性期に関連が深いと考えられる項目を抽出・加工し、病院の急性期度を数値化、見える化するものである。これにより各病院が「自院の急性期度を把握するとともに、他院とベンチマーク分析を行い、今後の病床戦略をより明確に立てることができる」と期待されるとしている。
 「急性期指標」とは、1.平成26年度の病床機能報告の項目(442項目)から、急性期に関連が深いと思われる219項目(救命救急入院料や全身麻酔の手術総数、救急医療の実施状況、看護師数など)を選定し、66項目に縮約2.この66項目を一般病床・療養病床の許可病床数合計値で除す(「1病床あたりの数値」を算出)3. 「1病床あたりの数値」を、全国における偏差値(平均が50、標準偏差が10となるように)へ変換し、50で除す(見やすくする)4.各項目のスコアを病院単位で合算し、これを「急性期指標」とする――ものである。
 今回の「急性期指標」について日本医師会は、▽急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれている▽急性期の項目を点数化して積み上げて病床数で割っているが、分母となる病床数に療養病床も含めている▽民間病院に多いケアミックス病院では、実態より低い急性期スコアが計算され、急性期機能が劣っているように見える▽地域医療構想では病院の機能分化を病棟単位で進めているが、急性期指標は病院単位である――などの問題点を指摘。「この指標が独り歩きすれば、地域医療を混乱に陥れるのは明白である」とし、「急性期指標」を使わないよう求めている。
 しかし、6月22日の第6回ワーキングでは、岩手県などでの調整会議で「急性期指標」資料が示され、既に活用されている状況が説明された。厚労省は、「注意事項を踏まえた上で、調整会議などの協議の場で活用するよう都道府県の担当者に求める」ことを明確にするとともに、引き続きワーキングで議論する考えを示した。
 調整会議においては、「病院ランキング」の指標ともなりかねない「急性期指標」のみに誘導されることなく、地域に必要な医療資源について、多角的な視点からの慎重な議論が必要であることは言うまでもない。