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医師の働き方改革を巡り日医が検討委員会を設置

府医ニュース

2017年8月2日 第2828号

 政府は3月28日、働き方改革実現会議(議長:安倍晋三首相)の最終会議を開き「働き方改革実行計画」を決定した。計画では、同一労働同一賃金等の非正規雇用の処遇改善や罰則付き時間外労働の上限規制の導入などが盛り込まれた。時間外労働については、週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とし、特例の場合を除いて罰則が課される。
 特例では、臨時的な特別の事情がある場合として、労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とし、かつ、当該時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設けることを規定した。一方、医師については、時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要との考えから、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、「2年後を目途に結論を得る」とした。
 現在、1週間の労働時間が60時間を超える者は雇用者全体の14%を占め、職種別では医師(歯科医師、獣医師を除く)が最も高く41.8%、次いで自動車運転従事者が39.9%である。医師の時間外労働の主な理由は、「緊急対応」や「手術や外来対応等の延長」が多く、次いで、「記録・報告書作成や書類の整理」「会議・勉強会・研究会への参加」となっている。月の最長連続勤務時間が、24時間を超える医師は1割強、宿直は月平均3.2回。1回当たりの拘束時間は平均で15.2時間(うち、実労働時間は平均5.3時間)である。
 このような状況を受け日本医師会は、5月10日の定例記者会見で会内に「医師の働き方検討委員会(プロジェクト)」を設置したと公表した。これまで日医は、平成20年から「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」を設置、21年には「勤務医の健康を守る病院7カ条」および「医師が元気に働くための7カ条」とするリーフレット、25年には「医師の健康支援を目指して――勤務医の労働管理に関する分析・改善ツール」を作成。更に26・27年度の同委員会での答申では、「勤務医の健康支援のための15のアクション」を提言するなど、勤務医の健康確保についての様々な取り組みを行ってきた。今後は、まず「医療勤務環境改善支援センター」の活性化、医師偏在の調整機能を担う「地域医療支援センター」が都道府県横断で医師の調整をできるような仕組みに工夫することなどを検討課題とし、医師の倫理観、法律で規定された応召義務を背景とした職業上の特性を十分に考慮した制度とする必要があると指摘している。「時間外労働時間規制を仮に導入する場合、応召義務のある医師にどのような方式が考えられるか」「診療時間、病院機能、地域間の差を一律に扱えるか」などのほか、「女性医師、高齢医師、研修医の扱い」「勤務間インターバル」「当直との兼ね合い」などを論点に挙げている。
 医師の業務の特殊性としては、応召義務のみでなく、自己研鑽に費やす時間など、タイムカードの打刻時間のみでは評価できない難しさがあり、業務内容の整理が必要である。数年後には、医師の働き方についてのパラダイムシフトが現実のものになるようである。