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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2017年6月28日 第2824号
大阪府耳鼻咽喉科医会(川嵜良明会長)は6月10日午後、大阪市内で平成29年度定時総会を開催。総会後には、茂松茂人・大阪府医師会長による特別講演会が行われ、医会員ら約150人が聴講した。
特別講演会では、川嵜・耳鼻科医会長が座長を務め、茂松・府医会長が「医の倫理――医療の基本的姿勢と最近の医療情勢」と題し、医師の在り方や我が国の医療制度の方向性などを解説した。
茂松・府医会長はまず、世界医師会総会でのジュネーブ宣言やヘルシンキ宣言、リスボン宣言における患者の権利擁護や生命倫理の考え方に触れ、医師の在り方を提示。日本医師会が規定する『医師の職業倫理指針』を順守し、公共性・非営利を前提として生涯学習や医道の高揚に努めることが肝要と説いた。また、同指針が示す▽医師の基本的責務▽患者との関係性▽人生の最終段階における医療▽生殖医療――などを紹介。「患者との関係性」では、認知症などで判断能力が低下している患者や未成年者への医療行為に対する家族への説明義務など、臨床現場で遭遇する事例を想定しながら具体的な診察を検証。周囲からの情報も勘案し、患者の状況を踏まえて「その人にとって適切な医療を提供することが大切」と加えた。人生の最終段階における医療については、国民のコンセンサスを得る必要があるとし、府医としても大阪府民と対話する場を模索していきたいと述べた。
引き続き、経済の推移から医療政策を分析。2000年代を境に財界を中心とした考え方にシフトしている点を課題に挙げ、プライマリーバランスの黒字化を第一義とする社会保障費抑制が至上命題とされてきたとした。一方で、個人の金融資産や企業の内部留保は世界トップレベルにあることを強調。現状の社会保障政策の方向性に疑問を呈した。更に、我が国では90年代後半に経済の大転換期を迎え、社会における所得分配の不平等さを測るジニ係数が上昇していると指摘。茂松・府医会長は、「生活者全員へ平均したサービスの給付」を行うことで、貧富の差が縮小されるとする井手英策氏(慶應義塾大学経済学部教授)の考えに賛意を表明し、「現物給付の拡大が経済効果を高める」と主張。北欧では、税負担の割合は高いが社会保障の充実により、「痛税感は低い」とし、政治への信頼を基盤に、国民全体で支え合う社会の構築が必要と力を込めた。
最後に、高度経済成長が期待できない現状を鑑み、「低成長時代の社会保障」を国民とともに考えることが大切と言及。府民集会なども視野に活動を続けたいとの意向を示した。あわせて、若手医師を対象に「ウェルカムパーティー」も実施するなど医師会活動の重要性を伝えているとし、一層の理解・協力を求めた。