TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

妊娠と育児 メンタルヘルスケアを講演

府医ニュース

2017年5月31日 第2821号

周産期医療研修会

 平成29年度第1回周産期医療研修会が5月20日午後、大阪市内で開催された。同研修会は大阪府委託研修事業の一環として府医が主催。この日は、「『周産期メンタルヘルスケア』――妊娠と育児に関わる心的負担とそのケア」をテーマに行われ、医療関係者約150人が受講した。座長は、金太章氏(大阪市立住吉市民病院新生児科部長兼小児科部長)および笠松敦氏(関西医科大学附属病院産婦人科助教)が務めた。
 開会にあたり市場博幸・府医周産期医療委員会委員長があいさつ。大阪における周産期医療体制は全国トップクラスであるが、更なる充実に向けて研鑚を積み、日常診療の一助にしてほしいと述べた。
 はじめに、「関連演題」として2題の発表が行われた。「当院における産後ケアショートステイの現状と課題」では、奥野美恵氏(泉大津市立病院助産師)が登壇。出産後の心身および育児サポートを目的として、28年度より開始した「産後ケアショートステイ」の利用例について、費用なども含めて具体的に報告した。続いて、「みんなで守る産後のこころ――産後うつ発見への取り組み」について、岡部直美氏(大阪府済生会吹田病院産婦人科病棟師長)が発表。産後うつによる自殺などの懸念を挙げ、「エジンバラ産後うつ病質問票」「構造化面接」などを通じた早期発見への取り組みを紹介した。
 その後、「妊産褥婦の抑うつ、不安に対する包括的支援の実践」と題し、清野仁美氏(兵庫医科大学精神科神経科講座講師)が講演した。清野氏は妊娠・出産によって、生物的・社会的に大きな変化が生じると前置き。抑うつや不安は、母子相互作用や子どもの認知・感情の発達に影響を及ぼす可能性があり、スクリーニングによる早期発見の対策が望まれるとした。その上で、メンタルケアを要する妊産褥婦に対し、各地域において、産科・小児科・精神科医療機関や行政等が協働でネットワークを構築する必要性に言及。特に、精神科治療を要する場合には、各診療科間の情報共有、治療方針の決定にかかるサポート体制の充実も求められると述べた。