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国境のない地図

府医ニュース

2017年5月31日 第2821号

 「国境のない地図」。これは、1995年3月に初日を迎えた宝塚歌劇星組公演のタイトルです(作・演出:植田紳爾、演出:谷正純)。この公演はこの年1月に起きた阪神・淡路大震災で被災した宝塚大劇場の復興第一作でした。
 細かいストーリーは忘れましたが、突然作られたベルリンの壁によって母と生き別れて西側に取り残された少年が、成長して有名な作曲家になり、壁の崩壊によって母と再会するといったような話であったと思います。クライマックスはベルリンの壁崩壊のシーンでした。私は何故かストーリーよりもこの公演の主題歌が強く印象に残っています。国境のない地図を夢見るという内容の歌詞でした。
 1989年のベルリンの壁崩壊から数年後のこの頃には、国境がなくなれば人類は幸せになれるのではと夢見るようなムードがあったのかも知れません。あるいはそのような理想主義が、震災からの復興を目指すという時代の空気にフィットしていたのかも知れません(公演の企画は震災前から決まっていたのでしょうが)。
 この作品に文句はないのですが、その後の統一ドイツ、「国境のないヨーロッパ」を目指したはずのEUの危機、トランプ大統領の出現などの情勢を見ていると、事はそう単純ではないようです。「国境のない地図」の夢はどうなっていくのでしょうか? 最近、この公演の主題歌が頭の中でグルグル回っています。(瞳)