
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
時事
府医ニュース
2017年5月31日 第2821号
5月12日、社会保障審議会介護給付費分科会が開催された。前回の4月26日の会合から来年度の介護報酬改定に向けての議論を開始しており、夏までに論点に関する議論とヒアリング、秋から12月にかけて各サービスの具体的な方向性を議論し、12月中旬には報酬や基準の考え方の整理を行うスケジュールとなっている。今回は、1.定期巡回・随時対応型訪問介護看護、2.小規模多機能型居宅介護(小多機)、3.看護小規模多機能型居宅介護(看多機)などが議題となった。
1.は、日中・夜間を通じて訪問介護と訪問看護の両方を提供し、定期巡回と随時の対応(訪問や電話指示など)を行うもので、サービス給付実績のない保険者が、平成28年10月時点で約65%(1579保険者中1023)もあり、地域ごとのばらつきがあることが報告された。また、サービス提供の多くが、集合住宅に居住する利用者に対して行われており、地域全体へ行き届いていないことが課題とされた。
2.は、「通い」を中心とし、様態や希望に応じて、随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせてサービス提供されるもので、利用者の45%が要介護3以上の中重度者と報告された。居宅介護支援事業所ではなく、小多機のケアマネジャーがケアプランを作成する仕組みだが、28年12月の閣議決定において、小多機以外のケアマネジャーによるプラン算定の可否について、必要性も含めて検討するとされていた。
3.は、2.に看護職の配置を加えたもので(26年度までは「複合型サービス」と呼称)、医療行為も含めた多様なサービスを24時間365日利用できると謳われている。28年4月時点での請求事業所は、全国で318に留まっている。利用者は要介護3以上が60%で、過去1年間の利用終了者のうち、施設や入院によるものが約半数、在宅死亡は8%、事業所内での看取りは16%と報告された。開始前の事業は、小多機が41%、訪問看護が32%を占め、事業開始が困難な理由について「看護職員の新規確保が難しい」が約6割、次に「事業採算の見通しが立たなかった」が約3割で続いていたという。
厚生労働省からは、小多機と他サービスとの併用(現在は、訪問看護、訪問リハビリ、居宅療養管理指導、福祉用具貸与のみが併用可能)、サテライト型看多機の取り扱い(現在は認められていない)などが、論点としてあげられた。
さて、上記1.と3.は、24年4月、新たな地域密着型のサービスとして創設されたもので、在宅療養の限界点を高め、地域包括ケアの中心的サービスになると期待されていた。それから5年間が経った時点での浸透度としては、いささか寂しいものがある。
特に看多機のポテンシャルは高いと思われるが、制度設計を含めて、どこかに無理があることは自明である。そのどこかを探り当て、修正することは可能だろうか――。(学)