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時の話題
府医ニュース
2017年5月31日 第2821号
子どもの貧困が社会問題化される中で、対策を総合的に推進するための施策の基本となる「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が、第183回国会において成立し、平成26年1月に施行された。これを受けて「子供の貧困対策に関する大綱」が、同年8月に出された。大綱には、1.貧困の世代間連鎖の解消と積極的な人材育成2.子どもに視点を置いた切れ目のない施策の実施3.子どもの貧困の実態を踏まえた対策の推進4.子どもの貧困に関する指標を設定しその改善に向けた取り組み――の4点を中心に方針が明記され、教育・生活・保護者の就労・経済的支援が打ち出された。
このような政府の動きを受け、各自治体において子どもの貧困対策が議論されている。大阪府では、子どもや子育てに関する支援策の充実を図り、効果的な子どもの貧困対策を検討することを目的に、「子どもの生活に関する実態調査」を行い、4月6日、報告書をとりまとめ公表した。調査は、28年7月に小学5年生・中学2年生とその保護者を対象に府下30市町村において住民基本台帳より8千人を抽出し、調査票を郵送し回収した。更に、7月から9月に大阪市などの13市町においても府との共同で調査を実施した。
調査は▽家計▽収入▽就業▽食事▽教育環境▽子どものつながり▽親への相談支援――など、多項目を等価可処分所得で4分類した困窮度によって検討された。その結果、健康に関する考察では、困窮度が高くなるにつれて朝食の頻度が低く、一方、朝食の頻度が高いほど保護者と子どもとの会話や一緒にいる時間が長く、子どもの将来に対する期待が高かった。また、朝食および休日の昼食の頻度が高いグループで、子どもの自己効力感(セルフ・エフィカシー)が高かった。更に困窮度によって心身の状況に深刻な影響が出ていることが明らかとなった。特に、「歯が痛い」「頭が痛くなる」「眠れない」「不安な気持ちになる」「やる気が起きない」「イライラする」などの症状の項目が高く、学習状況にも影響が出ているものと推測された。
保護者についても非正規や無業など、就労が不安定化するにつれ、心身の気になる項目数が増え、定期的に健康診断を受診している割合が低かった。困窮度が深刻化するに従い「将来に希望が持てる」「幸せだと思う」「生活を楽しむ」などの回答が低い傾向があり、子どもにも何らかの影響が出ていると考えられた。
このように困窮に伴う保護者の心身の不調が、子どもの心身の状態にも連鎖し、深刻な影響を及ぼしている可能性が示唆された。今回の調査結果を踏まえ、困窮度の高い家庭が孤立することなく、親子ともに自己肯定感を持てるような経済、福祉、労働、教育、子育て支援が必要である。特に貧困率が高いとされている大阪府においては、行政関係部署の積極的な協働・連携推進が重要であると考えられる。