TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

環境保健・健康づくり研修会

府医ニュース

2017年5月17日 第2820号

健康寿命延伸のカギは糖尿病対策

 大阪府医師会は4月13日午後、府医会館で平成29年度環境保健・健康づくり研修会を開催。医療従事者や行政担当者など約80人が参集した。
 開会にあたり、中尾正俊副会長があいさつ。近年の糖尿病患者の急増に対し、府医では行政・医療関係団体と連携した「大阪糖尿病対策推進会議」を中心に、重症化・合併症の予防に努めていると説明。研修内容を糖尿病診療、指導に役立ててもらいたいと語った。
 引き続き、「栄養食事療法――小児・高齢者・腎症重症化予防」と題して、川手由香氏(京都桂病院栄養部門栄養科長代行)が講演を行った。川手氏は、1型糖尿病を中心とした栄養指導「カーボカウント」(食事ごとの炭水化物量を計算する食事療法)、「食品交換表」(糖尿病食事療法のための食品交換表/日本糖尿病学会編)それぞれの長所、短所を説示。小児の栄養指導では、「食べることをネガティブに考えさせないこと」に注意を促し、チーム医療や家族の実情に合わせた指導を心掛けているとした。一方、高齢者の場合は、「QOLを重視した食事療法」を無理のない範囲で行うことが重要と説明した。また、栄養指導の上で大切なのは、患者を中心とする「Patient center approach」という考えを持つことと強調。栄養や食事に関する相談では患者との信頼関係を築くことが肝要であると述べた。
 次に、福田正博氏(大阪府内科医会長/ふくだ内科クリニック院長)が「かかりつけ医としての糖尿病トータルマネージメント」と題して講演。現在の糖尿病診療における問題として高齢化と肥満化を挙げ、低血糖、糖尿病治療薬、運動療法などについて詳説した。その上で、合併症を抑え、健康寿命を延ばしてQOLを維持するには、「食事」「運動」「薬物療法」の指導が必要であるとの見解を示した。特に、スルホニル尿素薬(SU薬)投与時の注意点を解説。高齢者における低血糖は認知機能の低下、転倒リスクの上昇などを招く可能性があるとした。あわせて、高齢者では筋肉量の維持が重要であるとし、フレイルやサルコペニア予防の運動療法指導を紹介した。