
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2017年5月17日 第2820号
全世界が注目する中、ぶっちぎりで超高齢社会へ驀進する我が日本。医療界は2025年へ向け地域医療構想や地域包括ケアで揺れています。ですが、高齢者数のピークは2040年、一方、人口全体は既に2004年から減少しているのです。高齢者対策には人口減少社会としての視点も欠かせないのではないでしょうか。
平成28年度第1~4ブロック合同懇談会は3月15日、「人口減少社会にみる今後の医療体制」をテーマに開催。広井良典・京都大学こころの未来研究センター教授が「人口減少社会のデザイン――医療・社会保障とこれからの日本社会」と題し講演されました。
まず「2040年、日本は持続可能か?」の問題設定がなされ、国際的にも突出した債務残高を将来に残しながら、20年前0.7%を切った生活保護が再び1960年レベルの1.7%まで上昇している現状が示されました。何よりの病根は、先進国で社会的孤立度が最も高く、更に教育を含めた若者・子どもへの支援(人生前半の社会保障)の薄さが低出生率の原因となっていることです。国連の世界幸福度ランキングで日本は51位であり、生活満足度と所得は決して相関しません。
人口減少社会への基本的視点は増加期とは「逆」であり、グローバル化の先のローカル化として、「若い世代のローカル志向」「各地域の持つ固有の価値や風土的文化的多様性への関心」が高まっています。その中で「持続可能な医療」について、現代の病を「複雑系」としてとらえ「健康の社会的決定要因」の探求と分析が欠かせず、そのためには医療費を1.研究開発2.予防・健康増進3.介護福祉4.生活サービス・アメニティーといった〝周辺部分〟に配分して医療全体の費用対効果を高め、公平性の観点から「入院・高次医療」に十分な公的保証、「チーム医療」「医療の質」の視点強化等が望まれるとのことです。「混合診療拡大」は、医療費高騰につながりやすく避けるべきとしています。
モデル事例として健康長寿世界一の長野県の▽高齢者就業率全国1位▽野菜摂取量全国1位▽保健予防活動の普遍化を取り上げ、急増するひとり暮らし高齢者の新たな「居場所」のある街づくりを挙げています。また、千葉県佐倉市の「ユーカリが丘」はループ状の鉄道の周辺に里山・森や古い社、各年代別施設を配します。30年以上続く計画的分譲で、今も子どもが増え続け、優秀なリアルシムシティとして全国から視察が相次ぎます。今後の超高齢社会では我々も医療のみならず、街の在り方まで目を向けなければと考えさせられました。