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時の話題

医師・看護師等の働き方ビジョン

府医ニュース

2017年5月17日 第2820号

国による管理医療はなじまない

 4月20日に厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会」「医師需給分科会」の合同会議、および「社会保障審議会・医療部会」が開催された。両会議では、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(以下、ビジョン検討会)が4月6日に公表した報告書に関する説明がなされた。
 ビジョン検討会は、「新たな医療の在り方」と、それを踏まえた「医師・看護師等の働き方・確保の在り方」の骨太な方向性を描くために設置された。すなわち、現在行われている医療政策や医療従事者の確保について議論する様々な審議会等で具体的な検討を進めるに当たり、その出発点としての役割を果たすことを志向するもので、「これからの医療政策の基本哲学」と位置付けている。その内容は多岐にわたり、医療を取り巻く諸問題の具体的な提言が盛り込まれている。実行のために厚労省内に「ビジョン実行推進本部(仮称)」を設置し、今後5~10年程度を基本軸とした政策工程表を作成した上で、内閣としての政府方針に位置付け、進捗管理を行うように求めている。
 現在、2025年に向けて医療・介護ニーズが高まり、多様化している中で医師の労働環境も大きな変革期を迎えている。「働き方改革」では、時間外労働の規制強化が進められている。一方で、医師については、労働時間が極めて長いものの、医師法で定められた応召義務や労働と研修の区別の難しさ、また、OJT(On the Job Training:日常の業務を通じて仕事に必要な知識・技術などの訓練を行うこと)により学び続ける環境も必要とされるなど、業務の特殊性がある。このため、医師の時間外労働規制の具体的な在り方は、2年後をめどに引き続き検討することになった。更に女性医師・高齢医師の増加、医師不足の主因とされている地域・科目偏在など、喫緊に取り組まなければならない問題もある。報告書では▽短時間労働や時差勤務の導入などの勤務体系の見直し▽診療看護師(仮称)養成やフィジシャン・アシスタント創設▽タスク・シフティング/タスク・シェアリングの推進▽女性医師支援の重点的な強化▽都道府県における主体的な医師偏在是正の取り組みの促進▽医療行政能力の強化▽地域医療支援センターと医療勤務改善支援センターの実効性向上▽柔軟なキャリア選択と専門性の追求を両立できる研修の在り方――などが提言されている。
 喫緊の課題である医師の偏在対策については、本報告書の内容を踏まえ、5月以降の「医師需給分科会」で検討されることになっている。提言のように、地域におけるプライマリ・ケアの確立は必要であるが、決して国による管理医療につながる制度であってはならない。我が国では、既に「かかりつけ医」がその機能を担っており、現在、日本医師会において、かかりつけ医の資質向上のため研修制度の推進に向けた取り組みが行われている。