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時の話題
府医ニュース
2017年5月3日 第2819号
厚生労働省は、現在の医師の勤務実態や、働き方の意向・キャリアを正しく把握することを目的に、平成28年12月に全国の医療施設に勤務する医師を対象として調査を実施した。今回の調査は、医師約10万人(回収済1万5677人)に対して行われた初めての大規模全国調査である。結果の概要は勤務時間(「診療」+「診療外」)については、年代が上がるにつれ減少していたが、20代の勤務医(常勤)は、週平均55時間程度で、これに当直・オンコールの待機時間が加わる。診療科別では、救急科、外科、臨床研修医が特に長い傾向があった。常勤医のうち、勤務時間が週60時間以上は男性27.7%、女性17.3%と過重労働、超過勤務の実態が示された。
育児中の働き方を見ると、男性医師は、「未就学児の育児中、子育て前と同じ働き方を希望」の割合が高く、約8割が実際に子育て前と同じ働き方をしていた。女性医師は、「時間短縮勤務」「勤務日数減」「業務内容軽減」の希望が多く、常勤医師の1割、非常勤医師の4分の1が「休職・離職」を経験していた。育児中、休職・離職した女性医師は、他の勤務形態の女性医師と比較し、専門医資格の取得率が低かった。
医師から他職種への分担が可能なタスクとして調査した5種の業務では、1.医療事務(診断書等の文書作成、予約業務)2.院内の物品の運搬・補充、患者の検査室等への移送3.血圧などの基本的なバイタル測定・データ取得4.医療記録(電子カルテの記載)5.患者への説明・合意形成――の順で多かった。これらのタスクを他職種が分担した場合、労働時間のうち、約20%(約47分)が軽減可能と推測された。
30代以下の医師は、キャリアとして勤務医、開業医、研究教育を希望、40・50代ではこれらの割合が下がる一方、介護・福祉分野、産業医の希望が増え、多様化する傾向があった。また、医師の44%が、今後、地方(東京都23区および政令指定都市、県庁所在地等の都市部以外)で勤務する意思があり、20代の勤務医では60%に上った。その期間は、20代は2~4年間、30代以上は10年以上を希望する割合が高かった。20代医師が地方で勤務する意思がない理由は、労働環境への不安、希望する内容の仕事ができない、医局の人事のため選択の余地がない、専門医の取得に不安があること、30・40代では、子どもの教育環境が整っていない、家族の理解が得られない、希望する内容の仕事ができない、労働環境への不安などであったが、専門医の取得への不安は理由として少なかった。
これらの調査結果を踏まえて、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の議論が進められ、4月6日、報告書が厚労大臣に提出された。