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関西医科大学同窓会大阪支部総会で茂松会長

府医ニュース

2017年4月26日 第2818号

社会保障の充実こそが社会の安定に

 関西医科大学同窓会大阪支部(杉岡武彦支部長)の平成28年度総会が3月12日午後、同大学枚方新学舎で開催された。総会後には茂松茂人・大阪府医師会長が、「最近の医療情勢」と題して講演を行った。
 現在、茂松・府医会長は日本医師会理事を兼務。中央情勢に接する機会が増えており、医療における自身の考えを率直に伝えたいとした。冒頭、国民皆保険制度の導入以降の歴史を振り返りながら、「医療と経済」について解説。「医療費適正化」と称して、様々な医療費抑制策が進められていることを示した。茂松・府医会長は、「費用対効果」の側面で医療が捉えられていると憂慮。医療者の貢献や医療の不確実性などは考慮されないまま、医療を「サービス」とみなす傾向が強まっていると述べた。また、近年の歳出歳入の動きを見ると、税収の伸びの割に社会保障費を含む政策的経費が増加していないと指摘。国が国民の命や健康をどう考えているのかと疑義を呈した。一方、企業の利益剰余金や家計金融資産の合計は2千兆円超に上ると紹介。医療・介護による雇用誘発力なども踏まえ、社会保障の充実こそが社会の安定や経済の活性化につながるとの見解を表明した。その上で、更なる医療費抑制は国民を不幸にすると強調。社会保障を重視した国づくりを政治に求めたいと述べるとともに、府医でも地域住民に理解を促す取り組みを進めたいとした。
 そのほか、「医療制度改革」「地域医療構想と地域包括ケアシステム」「介護保険の現状」「新たな専門医の仕組み」「高額薬剤」などの話題を提供。地域医療構想では、病床削減の手段とせず、不足する病床機能を手当てすべきとの見解を述べた。また、高齢化への対応と並行し、少子化への適切な取り組みの必要性に言及。高額薬剤に関しては、安全性・有効性が確認された医薬品は速やかに保険収載されるべきと前置き。医療費全体や国民皆保険制度への影響を考慮し、厚生労働省が「最適使用ガイドライン」を定め、高い専門性を持つ医師が適切に処方できることが求められると報告した。
 引き続き、「耳下腺腫瘤の診断と治療」と題し、関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座主任教授の岩井大氏が講演。終了後には茂松・府医会長も加わり、懇親会が開催され、旧交を温めた。