TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

ミミズクの小窓 Returns

ポケモンGOでウォーキングにGO!?

府医ニュース

2017年4月26日 第2818号

 大阪府医師会員諸兄姉におかれては、「ポケモンGO」なるものをご存じだろうか。ポケモン、すなわちポケット・モンスターは20年ほど前に日本で誕生し、今や世界中で棲息する異形のゲームキャラクター達である。一時は子ども達の圧倒的支持を得ていたが、最近はネコの地縛霊なるものが率いる「妖怪ウォッチ」に押され気味と聞く。そこでポケモンは「ポケモンGO」なるゲームで巻き返しに出た。昨年7月のことである。この試みは見事に当たり、このゲームは全世界で5億回以上ダウンロードされたという。
 「ポケモンGO」はプレーヤーが自らのスマホで地図情報を見ながら歩き回り、ゲームキャラクターを探して捕まえ、育成し、進化させるゲームである。自分で書いている意味がほとんど分かっていないところがちょっと怖い。このゲーム、子どもは言うに及ばず、若年・成人の間でも大流行し、スマホに夢中になって前方不注意による衝突事故が多発した。被害者が死亡するという痛ましい交通事故も起こった。「良い歳をした大人が何をやっているのか!」と言いたくなる。
 一方、「そうは言っても、あんなに熱心にキャラクターを探して歩き回るのなら、散歩のモチベーション増進に有益なのでは?」という考えの下、「ポケモンGO」のウォーキングにおける効果を検証した研究が、米国のグループから発表された。例によって遊び心満載の『British Medical Journal/2016年クリスマス特集』である。対象は米国在住の18~35歳の若者1182人でポケモン・プレーヤー560人、非プレーヤー622人、プレーヤー群の特徴は年齢がより若く、高学歴者が少なく、世帯収入が少なく、BMI30以上の肥満者が多い……、などけっこうボロクソである。さて肝心のウォーキングにおける効果であるが、歩数増加効果が見られるのは初めのうちだけで、開始6週間後には元のレベルに戻っていた。
 ウォーキングは健康的な生活習慣の確立や疾病の運動療法の手段として安全性、経済性など、どれをとっても理想的である。問題は「いかにして継続するか」であろう。「ポケモンGO」もまた、継続の力にはなり得なかった。やはりゲームは"飽きる"のだ。ウォーキングの要諦は "何者にも頼らない地道な努力″に尽きる。だが不肖ミミズクは飽きっぽいし、地道な努力も苦手だ。どうしたものか。「勝手にしろ!」というご批判は甘んじて受けたい。